台湾救助隊を「日本政府が拒否」はまったくの誤情報|和田政宗

台湾救助隊を「日本政府が拒否」はまったくの誤情報|和田政宗

偽の救助依頼情報がSNSで発信され、救助が混乱するという事態が起きた。また、政府の初動対応についても「遅かった」などと事実に基づかない発信が続いている――。被災地の救援支援に対し、事実に基づかない批判をするのは、被災された方のためではなく、自らのイデオロギーや主張のために利用していると見られてもおかしくない。


大きな役割を果たしたNHKのアナウンサー

正月の一家団欒が一変した午後4時10分。能登半島で起きた巨大地震は、多数の死傷者を出し、多くの家屋を倒壊させた。石川県輪島市内などでは火災によって街が焼失した。

お亡くなりになった方々のご冥福を心からお祈りするとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げる。そして、翌2日に新潟への支援物資輸送中の海上保安庁の職員が航空機事故によって殉職されたことに哀悼の誠を捧げたい。

1月1日は、まず午後4時6分に地震が発生し、緊急地震速報が出された。この地震は石川県珠洲市で震度5強で、NHKが天気カメラで珠洲市の様子を中継したが、その最中に再び地震が発生し緊急地震速報が出された。激しい揺れがリアルタイムで中継され、家が倒壊したことも映像からわかった。

この瞬間から、とんでもない状況になったと、完全に私のモードも変わった。午後4時22分には大津波警報が発表され、津波が来襲。私はSNSで津波からの避難を必死に呼びかけた。SNSで呼びかけて何になるのかと疑問に思われる方がいるかもしれないが、津波の情報は総力を挙げて呼びかけなければ届かない。

停電でテレビ・ラジオが使えなかったり、防災無線が停電や倒壊で機能しない場合もあり、SNSを含めあらゆる手段で呼びかけることが津波から命を守るために重要なことである。

なお、今回の地震と津波発生において、NHKのアナウンサーの呼びかけはしっかりしていた。私は防災、災害対応をアナウンサー時代から専門とし、地震津波時のNHKアナウンサーの呼びかけコメントの改定にも携わったが、スタジオのアナウンサーは避難を促すために大きな役割を果たしたと言える。

今回の津波はあっという間に到達した。東北大学の今村文彦教授が計算したところ、地震発生後約1分で石川県珠洲市に津波の第一波が到達したとみられる。東日本大震災の時もそうであったが、地震があったら津波を警戒し、とにかく海や川の河口付近からは離れ、できるだけ海や川から遠くに避難することが重要である。

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偽情報がSNS上で発信され拡散

今回は多くの方が即座に避難されたが、津波による大きな被害が段々とわかってきている。そして、発災当初から懸命な救出作業が行われている。地域の消防、警察、自治体が中心となり、災害派遣された自衛隊も現地に到着次第、救出作業にあたった。

しかし、珠洲市長が市内中心部について、「ほとんど立っている家がない。9割方全壊、もしくはほぼ全壊といったような状況。壊滅的な状況」と述べるように倒壊家屋が極めて多く、閉じ込められた方が多くいらっしゃる。現在も救出作業が行われているが、陸路においては各地で道路が寸断され、海から救援に入ろうとするも岸壁が落ちてしまって自衛艦が接岸できない地域もあった。

そうした中、懸命に消防等の関係機関が救援にあたり、自衛隊は陸路だけでなく、空からの救出や支援の投入、ホバークラフトで海からの上陸をはじめ総力を挙げ被災された方々の救援、支援にあたっている。

今回の地震の大きな特徴は、激しい揺れで各地で土砂崩れが起き、道路が寸断され孤立集落があちこちで発生したことである。こうした孤立集落への救援もいま懸命に行われている。そうした中、偽の救助依頼情報がSNSで発信され、救助が混乱するという事態が起きた。

実在しない住所や、無関係の画像で救助を求めるなど、偽情報がSNS上で発信され拡散されてしまったのである。拡散をした方々は、「助かってほしい」と善意でリポスト等をしたわけだが、偽情報の発信者は自らが注目を浴びインプレッション数を稼ごうとしたのではないか。真相はわからないが、皆が困難を乗り越えようと力を合わせる中、人としてやってはならないことであり、言語道断であると強く非難する。

また、政府の初動対応についても「遅かった」などと事実に基づかない発信が続いている。事実を記せば、地震発生から5分後の午後4時15分に岸田首相は、政府全体に対し「総理指示」を出し、政府一体となって被災者の救命救助等の災害応急対策に全力で取り組むよう指示した。

自衛隊は自主出動し情報収集活動を開始、さらなる出動準備にあたっていたところ、午後4時45分に石川県の馳浩知事から災害派遣要請があり、正式に災害派遣が行われた。

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