【読書亡羊】「メディアが報じない真実」より大事な「プロの仕事」 増田雅之編著『ウクライナ戦争の衝撃』(インターブックス)

【読書亡羊】「メディアが報じない真実」より大事な「プロの仕事」 増田雅之編著『ウクライナ戦争の衝撃』(インターブックス)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


他に朝日新聞でも〈軍事が語られる日常〉の是非を問う欄が設けられた。

(交論)軍事が語られる日常 佐藤丙午さん、水島朝穂さん:朝日新聞デジタル

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15306649.html

 ロシアのウクライナ侵攻で、日本のお茶の間でも最新兵器の話題が飛び交い、一部の政治家は防衛力強化に前のめりの発言を繰り返す。軍事の議論が「日常」に入り込む現状に、危うさはないか。軍事と外交をめぐる議論…

Getty logo

もちろん防衛研究所を英雄視したり、妄信したりする必要はないし、おそらく誰もしていない。論じられるべきは、ひとえに解説の中身であろう。

繰り返しになるが、今日の情報空間では、大学の権威でも、あるいは元首相でも、現役国会議員でも、ロシアのプロパガンダと全く同じ論調の見解を口にし、元ウクライナ大使が陰謀論を垂れ流して現役国会議員がそれに感化されている、これが現状なのだ。

その中において、積極的にテレビ出演されている国際政治学者の方々や、本書に寄稿されている防衛研究所の方々の解説や情報分析力は、国民の現状認識を形成するうえではもちろん、日本の今後の防衛政策、外交戦略を考えるためにも死活的に重要である。

素人講釈とは全く違う「プロの仕事」とはどんなものか、ぜひ本書でお確かめいただきたい。

なお、本書の売り上げの一部はウクライナへ寄付されるという。

時を経るごとにウクライナの被害は積み重なっているが、事態が長引けば長引くほど関心が薄れかねないのが人心というもの。侵攻開始前からの経緯を、今一度振り返っておきたい。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

関連する投稿


【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは  謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは 謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【読書亡羊】雑誌「冬の時代」が過ぎて春が来る?  永田大輔・近藤和都(編著)『雑誌利用のメディア社会学』(ナカニシヤ出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】雑誌「冬の時代」が過ぎて春が来る? 永田大輔・近藤和都(編著)『雑誌利用のメディア社会学』(ナカニシヤ出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【読書亡羊】世直し系YouTuberは現代の鼠小僧なのか  肥沼和之『炎上系ユーチューバー』(幻冬舎新書)|梶原麻衣子

【読書亡羊】世直し系YouTuberは現代の鼠小僧なのか 肥沼和之『炎上系ユーチューバー』(幻冬舎新書)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


ディープステートの正体|なべやかん

ディープステートの正体|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


【読書亡羊】戦後80年目の夏に考えるべき「戦争」とは  カルロ・マサラ『もしロシアがウクライナに勝ったら』(早川書房)|梶原麻衣子

【読書亡羊】戦後80年目の夏に考えるべき「戦争」とは カルロ・マサラ『もしロシアがウクライナに勝ったら』(早川書房)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


最新の投稿


埼玉クルド人問題から見えた自壊する自民党と躍進する参政党|石井孝明【2025年10月号】

埼玉クルド人問題から見えた自壊する自民党と躍進する参政党|石井孝明【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『埼玉クルド人問題から見えた自壊する自民党と躍進する参政党|石井孝明【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは  謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは 謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。