ケネディ暗殺新資料で読み解く共産主義勢力の工作|瀬戸川宗太(映画評論家)

ケネディ暗殺新資料で読み解く共産主義勢力の工作|瀬戸川宗太(映画評論家)

ウクライナ侵攻を機に共産主義国家と深いつながりのあるロシアによる情報操作も一層活発化している。共産主義国家、権威主義国家によるスパイ活動は、決して映画のなかだけの話ではない。ケネディ暗殺を研究してきた映画評論家・瀬戸川宗太氏が、2017年に公開された新資料を分析したドキュメンタリーを紹介!


さらにボブが見つけた文書には、注目すべき記述が残されていた。
「一九六七年十月二日匿名CIA局員の供述」には、オズワルドがメキシコシティを訪れたのはダラスで起きた悲劇の八週間前、一九六三年九月二十八日と記されている。

しかし、二〇一六年の取材により制作されたテレビ番組で、ボブとバーコヴィッチは、既にオズワルドがメキシコシティにあるソ連大使館でKGBと会い、その場には暗殺等の謀略を行う部署第13課のトップがいたのを突きとめていた。
 
オズワルドのソ連・キューバ大使館訪問は、多くの暗殺研究本も触れているが、長い間さして重要な事柄とは見なされてこなかった。

代表的な例としては、映画『JFK』でギャリソン検事(ケヴィン・コスナー)が「〔CIA〕はオズワルドを共産主義者にしたかった。メキシコでの工作は黒幕をカストロにするためだ」と自説を披露し、オズワルドのメキシコ行きは真相をそらすためのCIAの偽装工作と決めつけるシーンである。
 
これが事実だとすると、ギャリソン検事の捜査を、ウォーレン委員会報告がミスリードしていることになる。同委員会はオズワルドのメキシコ行きを単なる休暇のための一人旅と判断していたので、KGBとの会合を報告書に記載しなかった。
 
そのためメキシコシティにあるソ連・キューバ大使館から観光ビザを却下されたオズワルドの行動は謎に包まれたままだったが、新たに公開された文書によって全貌が明らかとなった。
 
ボブは文書を読みながら、

「オズワルドはたやすくバスチケットを購入し、メキシコシティへ向かったと思っていた。だがこの行を見てくれ。
〈メキシカーノはオズワルドとメキシコシティへ行った〉
 オズワルドが一人でなかったのは明らかだ。計画にからむ誰かがいた。これは驚くべき新事実だ」
 
そしてボブは「ルイジアナの軍事訓練施設の責任者がメキシカーノだった」と付け加える。

暗殺のプロが同行していた

一九五九年、カストロはバチスタ政権を倒し革命政権を樹立。一九六一年ケネディ大統領は社会主義化を進める同政権を倒すために、キューバへ亡命キューバ人部隊を送り込んだ(ピッグス湾事件)。
が、カストロの思わぬ反撃をうけ、形勢不利と判断した大統領は上空からの支援を取りやめた。
 
結局、百名が死亡、千名以上が捕虜となったので、多くの亡命キューバ人がケネディ大統領に敵意を抱くようになる。CIAはその後もキューバへの秘密工作を繰り返したが、その先兵となったのが亡命キューバ人グループ。彼らはケネディを憎みながら、キューバ共産主義政権打倒のため軍事訓練に励んでいた。
 
その秘密軍事訓練場が南部のルイジアナ州にあったのを、ボブたちは二〇一六年の現地調査で発見している。番組六回分の第三話ではルイジアナのベルチェイスにある五十に及ぶCIAが使った貯蔵庫を確認。

その一部から爆発物の痕跡まで科学的に検証し、第四話では、同じくルイジアナの人里離れた沼地で、米軍の弾薬を入れていた軍用ケースを川底から引き揚げてもいる。
 
オズワルドは、暗殺が決行された一九六三年の八月二十一日~九月十七日の間行方が分かっていない。
 
ボブは、ニューオリンズでのCIAや亡命キューバ人とのつながりから、オズワルドがルイジアナの秘密基地でライフル銃を使った狙撃など、徹底した訓練をうけていたと推測している。
 
この点、映画『JFK』がニューオリンズでの反カストロの活動を行っていたガイ・バニスター、デヴィッド・フェリーとオズワルドの奇妙な結びつきや亡命キューバ人の秘密基地で軍事訓練を指導しているフェリーの姿を、映像化していたのを思い出してもらいたい。

オリヴァー・ストーン監督の真犯人追及の方向性は、けっして的外れではなかったということになる。
 
オズワルドと共にメキシコシティへ旅行した同伴者がルイジアナ訓練施設の責任者だったとしたら、どのようなストーリーが成り立つか。
 
これについては、公開された機密文書一九六八年六月二十八日FBI内部メモが重大な事実を伝えている。同メモによるとオズワルドとメキシコへ行った人物は、FBI捜査の重要参考人で、本名をF(フランシス)・タマヨといい、一九六八年六月に暗殺未遂罪でベネズエラのカラカス警察に逮捕され、暗殺のプロだったのが判明した。
 

外国政府による暗殺の可能性

関連する投稿


国を憂える政治家はいるか|田久保忠衛

国を憂える政治家はいるか|田久保忠衛

当然ながら、参院選最大の論点は、日本を改革する憲法改正の是非になるはずだ。が、どの候補が日本の国難の核心に触れる意見表明を行ったか。自分はどうなろうと国を憂える、といったパフォーマンスは流行らなくなったのだろうか。


徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

世界では、習近平が退陣するのではないかというニュースが飛び交っている。一部のSNSでは、習近平主席がすでに半ば退位し、李克強首相が代行しているとの書き込みで溢れている。果たして、この「宮廷クーデター」(「反習派」による習主席の退位)の“噂”は本当なのか? 徹底検証する。


「米国による平和」は終わった|田久保忠衛

「米国による平和」は終わった|田久保忠衛

10年以内に中国は米国よりも強くなると見るドイツ人は56%に達しており、米国は頼みにならないので欧州の防衛に投資すべきだと考える向きは60%に及んでいる。


台湾をリムパックに招かないのは遺憾だ|太田文雄

台湾をリムパックに招かないのは遺憾だ|太田文雄

3月末にバイデン政権が公表した「国家防衛戦略」のファクトシート(概要説明文)は「中国に対する抑止強化」をうたっている。リムパックへ台湾を招かなかったことは、これに沿った措置とは到底思えない。


敬服すべきブレジンスキー氏の洞察力|田久保忠衛

敬服すべきブレジンスキー氏の洞察力|田久保忠衛

ブレジンスキーが今から25年前に書いた「巨大な将棋盤」には、中国の現状、さらにはロシアがウクライナに侵攻し、目的を達成すればユーラシア大陸、ひいては世界の大国にのし上がるだろうと予想されていた。ブレジンスキーは日本に対しても鋭く言及している。


最新の投稿


新領域での戦いに自衛隊は取り残される|織田邦男

新領域での戦いに自衛隊は取り残される|織田邦男

サイバー戦においても立ちはだかる「専守防衛」の軛。日本は現代戦に取り残される一方である。にもかかわらず、「自衛隊は現代戦が戦えるのか」といった本質的な問いかけをする政党はない。


自民党「敗北」の可能性も 参院選終盤情勢を占う|和田政宗

自民党「敗北」の可能性も 参院選終盤情勢を占う|和田政宗

参院選は終盤戦へ突入し、10日の投開票日まで1週間を切った。ここにきて自民支持が下落しているのはなぜなのか。自民に投票していた方々の投票先は今回どうなるのか。私の分析では岩盤保守層、岩盤自民支持層20%のうちすでに10%は逃げている――。


国を憂える政治家はいるか|田久保忠衛

国を憂える政治家はいるか|田久保忠衛

当然ながら、参院選最大の論点は、日本を改革する憲法改正の是非になるはずだ。が、どの候補が日本の国難の核心に触れる意見表明を行ったか。自分はどうなろうと国を憂える、といったパフォーマンスは流行らなくなったのだろうか。


違う意見に耳を傾けたら相手をもっと嫌いになった! クリス・ベイル『ソーシャルメディア・プリズム』(みすず書房)

違う意見に耳を傾けたら相手をもっと嫌いになった! クリス・ベイル『ソーシャルメディア・プリズム』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

世界では、習近平が退陣するのではないかというニュースが飛び交っている。一部のSNSでは、習近平主席がすでに半ば退位し、李克強首相が代行しているとの書き込みで溢れている。果たして、この「宮廷クーデター」(「反習派」による習主席の退位)の“噂”は本当なのか? 徹底検証する。