女優のミア・ファロー。
「ただのジョークでしょ。それがクリス・ロックの仕事。今回のジョークは彼にしてはマイルドな方よ」
ジム・キャリー。
「気分が悪くなった。それなのに(受賞すると)みんな総立ちで拍手を送ったんだよ。ハリウッドは骨抜きだと思ったね。ぼくはウィルに2億ドルの損害賠償を要求する訴訟を起こすと発表したいくらいだ」
伝説のバスケットボール選手アブドゥル・ジャバーも自身のコラムでこう批判。
「ウィル・スミスはとても悪いことをした。あの一発で、彼は暴力を推奨し、女性を虐げ、エンタメ業界を侮辱し、黒人に対するステレオタイプを強化したのだ」
アカデミー賞委員会もウィル・スミスの除名、主演男優賞の剥奪を検討中だという(ウィル・スミス、本人が先手を打つ形で脱会)。
誰もウィル・スミスを擁護しない。
もう一度言う。
それほど騒ぐことなのか。
たかが平手で顔を張っただけ。クリス・ロックがケガをしたわけでもない。
そこでひと言、スマンと謝るか、コメディアンなら、ジョークの一つも飛ばせば、会場、爆笑で終わったのではないか。
今回の件でぼくが嫌なのは、アメリカ人の反応に、ポリコレに通じるものを感じるからだ。
今、ポリコレ全盛のアメリカでは、「メリー・クリスマスはキリスト教徒の祝祭を非キリスト教に強要することになるから使ってはいけない」とまでなっているらしい。
今回のウィル・スミス批判、なにか、それと同じ臭いがする。
(初出:「夕刊フジ」4月6日)
月刊『Hanada』編集長。1942年、東京生まれ。66年、文藝春秋入社。88年、『週刊文春』編集長に就任。部数を51万部から76万部に伸ばして総合週刊誌のトップに。94年、『マルコポーロ』編集長に就任。低迷していた同誌部数を5倍に伸ばしたが、95年、記事が問題となり辞任、1年後に退社。以後『uno!』『メンズウォーカー』『編集会議』『WiLL』などの編集長を歴任。2016年4月より現職。