チベット弾圧とパンダのぬいぐるみ
表彰式ではメダリストにパンダのぬいぐるみが渡されているが、パンダの主要生息地は中国が弾圧を行っているチベットであり、そのことを知っている方々にとっては何とも形容し難いものであろう。
なお、中国は気付いているのだろうが、フィギュア会場はぬいぐるみ持ち込み禁止なのに、表彰式ではパンダのぬいぐるみが渡されるという矛盾が起きている。こうしたプロパガンダとともに、中国は情報統制を行い、情報監視や抜き取りをしているとみられる。
開会式の前日である今月3日に松野博一官房長官は記者会見で、北京冬季五輪に参加する選手や関係者のスマートフォンの情報が、中国が使用を求める専用アプリによって抜き取られる恐れがあるとして、スポーツ庁や内閣サイバーセキュリティセンターから日本オリンピック委員会(JOC)に注意喚起を要請したと明らかにした。
日本政府が公式に、スマホなどに対する中国の諜報活動が存在することを認めたことになる。政府は根拠のないことは言わないし、欧米各国とも情報交換をしている。北京冬季五輪開会直前まで、こうした呼びかけを政府は行わず、選手などの自主的な取り組みに任せる方針だったから、新しい根拠のある情報を掴んだか、情報がもたらされたと考えられる。
携帯電話のクレンジングという異常
北京冬季五輪では、新型コロナウイルスの感染対策として、選手や関係者に対しスマホの専用アプリで毎日の体温などを登録するよう求められている。しかし、このアプリについては、既に米国のオリンピック委員会が情報が抜き取られる恐れについて警戒を呼び掛けていた。
さらに、松野官房長官は9日の記者会見で、「オリンピックに参加する日本選手団に対し、帰国の機中でアプリの削除を徹底し、帰国後、選手本人の同意の上で専門家による検査を行い、検査結果に基づいたクレンジングをスポーツ庁がJOCと共同で実施する」と述べた。
徹底的に中国における情報監視や情報抜き取りの痕跡を調査するとともに、日本帰国後の継続的な情報抜き取りを阻止するためであると考えられる。
なお、日本パラリンピック委員会(JPC)は、来月行われる北京冬季パラリンピックに出場する日本選手団全員に、このアプリを入れるためのスマホを貸与することを決めた。
こうした異常な状況で開催されるオリンピックは、真に五輪憲章に則ったオリンピックとは言えないと私は繰り返し述べてきた。選手の活躍については心から声援を送るが、中国の国家としての北京冬季五輪運営については、大会が終わっても後味の悪さと疑問が残るであろう。
第一に守られるべき選手が、帰国後に携帯電話のクレンジングを受けなくてはならないオリンピックなど本来あってはならない。