中国による「くまのプーさん」隠し
五輪3連覇を目指していた男子フィギュアスケートの羽生結弦選手。ジャンプの転倒もあり4位の成績であったが、「一生懸命頑張りました。正直、これ以上ないぐらい頑張ったと思います。報われない努力だったかもしれないですけど、一生懸命頑張りました。」と競技後のインタビューで答えた。
悔しかったと思うが、どんな状況でも最善を尽くすというトップアスリートの気概が感じられる信念の演技だった。仙台で羽生選手の高校時代からずっと見続けてきた私も本当に悔しいが、心からエールを送りたい。
一方、中国による「くまのプーさん」隠しは、やはり実行された。これまでの大会では、羽生選手が滑り終わった後には、羽生選手が好きな「くまのプーさん」のぬいぐるみがファンによりスケートリンクに投げ込まれ、この光景は「プーさんシャワー」と呼ばれてきた。
これが北京五輪においてどうなるかが注目されていたが、結局フィギュアスケート会場へのぬいぐるみの持ち込みを禁止するという手段に打って出た。中国では、「くまのプーさん」が習近平国家主席に似ているとの投稿が相次ぎ、4年前からはネット上で検索ができなくなっているが、オリンピックでもプーさん隠しを徹底した。
なお、4日の開会式では、ぬいぐるみは持ち込み禁止になっておらず、恣意的に「プーさんシャワー」を阻止したとも言える。
ウイグル人弾圧と「中国台北」
こうした中国の情報コントロールとプロパガンダは、五輪開会式から徹底して行われた。開会氏における最終聖火ランナーには、ウイグル人女子選手が起用され、「民族融和」のプロパガンダが展開された。
一方でウイグルには多数の装甲車が展開されるとともに、五輪に出場しているウイグル人選手へのインタビューも規制されている。つまり、この北京冬季五輪はウイグル人への弾圧のもと行われている大会なのだが、それが徹底的に隠されている。
なお、ウイグル人弾圧について記者会見で問われたIOCのバッハ会長は、「IOCの立場は政治的に中立で政治問題にはコメントしない」と述べた。五輪憲章を無視する中国の行動について言及しないことが政治問題であることがわからないのか、とIOCには問いたい。
さらに、開会式においては、台湾に対する中国国内向けのプロパガンダも行われた。開会式のテレビ中継で、国営中国中央テレビ(CCTV)のアナウンサーは、台湾の代表団を「中国台北」と呼んだ。
会場のアナウンスでは従来通り「中華台北」であったが、あえて放送では、「中国台北」と呼び、台湾が中国の一部であるとの中国共産党政権の主張に基づく表現を行った。
さらに、CCTVは台湾選手団が入場した際に、会場の習近平国家主席を映した。台湾については、国際的プロパガンダはあきらめたものの、中国国内向けプロパガンダを行ったのである。