スポーツをゆがめる中国に五輪開催の資格なし|古森義久

スポーツをゆがめる中国に五輪開催の資格なし|古森義久

「日中友好、新型コロナ、ウイグル・ジェノサイド否定、パンダ親善大使、核先制不使用……国家ぐるみの虚偽(フェイク)が白日の下にさらされる」――産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏だからこそ書けた秘密主義国家が最も隠したい真相情報と米中対立の内幕『中国、13の嘘』が発売中! 今回は本書から、彭帥さんをめぐるバッハ会長の欺瞞を公開!


彭帥選手とバッハ会長のテレビ電話会談。習近平のプロパガンダに加担するIOC会長。(IOCのHPより)

中国の独裁に従うIOC会長

同決議は以上の現状認識を示したうえで議会下院としての反応を次のように宣言した。

•IOCのバッハ会長の言動は明らかに中国政府の人権抑圧に協力して、スポーツ選手である彭氏の権利の迫害に加わることに等しいため、アメリカ議会としてこれを非難する。IOC全体とバッハ会長がともに中国政府に対して彭氏に関する情報を完全に開示することを要求すべきだ。

•IOCは独自に彭氏の安全と自由を確認するための調査を実施すべきだ。同時にアメリカ政府や国連もこの事件をスポーツ選手たち全体の人権や自由への迫害として調査をすべきである。また彭氏がこんご望むならばアメリカへの移住を認める。

同時にこの決議が明示したのは中国という独裁国家が、スポーツやスポーツ選手をも平然と政治的な抑圧の対象にする実態だった。そしてその中国の独裁に国際オリンピック委員会の会長が唯々諾々と従うという実態も浮き彫りとなった。

スポーツを政治から切り離すことはできない

オリンピックのボイコットで歴史に特筆されるのは、1980年のモスクワ五輪である。アメリカ、日本など西側諸国の多くが全面ボイコットをした。

その理由はソ連軍によるアフガニスタンへの侵攻だった。1979年12月末、ソ連軍の大部隊がアフガニスタンに侵入し、首都カブールを襲って、国家元首を殺害した。その後、ソ連軍はアフガニスタン全土の軍事占領を図り、攻撃を続けた。

この軍事侵略に抗議して、アメリカや西側陣営の多くの国が、ソ連が首都モスクワで開催する1980年のオリンピックに「ノー」を突きつけた。このとき日本側ではボイコットへの反対の声もあがった。その主張の趣旨は「スポーツと政治は別」ということだった。

だがこの点について当時、私が強い印象を受けたのは、アメリカの大物上院議員でオリンピック参加歴のあるウィリアム・ブラッドレー議員の言葉だった。

「スポーツを政治から切り離すことは、酸素を空気から切り離そうとすることに等しい」

民主党上院議員のブラッドレー氏は1980年のモスクワ五輪への、明確なボイコット論を主張して、その理由をこう説明した。同氏はその後、中国が五輪を開催することにも人権弾圧を理由に反対した。

ブラッドレー氏は政界入りする前、全米で超人気のバスケットボール選手で、1964年の東京オリンピックにはアメリカ選手団主将として参加し、金メダルを獲得した。そんな輝かしいスポーツ歴の政治家が、政治こそスポーツを含む人間のすべての行動にかかわるのだから、スポーツだけを政治から完全に切り離すことはできない、と説く言葉は重みをもって長く引用されてきた。

日本の論議でも参考となる言葉ではないだろうか。

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