【読書亡羊】実に野蛮で洗練された中国のウイグル弾圧 ジェフリー・ケイン著、 濱野大道訳『AI監獄ウイグル』(新潮社)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


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中国がAIの能力に驚愕したのは碁でトップ棋士を打ち負かした人工知能「AlphaGo」の存在だった。そこでAIの情報分析、予測機能を国内の「治安維持」のために生かそうという発想になるのだが、当然、それだけでは終わらない。

共産党体制の維持が死活問題である中国共産党当局にとって、国内で起こる不測の事態をコントロールできるようになれば、次に考えるのは国外からもたらされる不測の事態への対処であろう。AIの軍事利用についての中国側の認識は、中国軍人・龐宏亮の書いた『中国軍人が観る「人に優しい」新たな戦争 知能化戦争』(安田淳監訳、五月書房新社)に詳しい。

AIの分析を口実に、中国軍が「対外的予防的措置」に及ぶ可能性は低いとは言えない。自国民ですら、抑圧するのに躊躇がないのだから。

中国軍人が観る「人に優しい」新たな戦争 知能化戦争

現在進行形の人権弾圧

亡命ウイグル人の告発や、それに基づく中国共産党批判には、普段は人権派と目される人たちの反応が鈍い面がある。また、中国共産党批判の文脈から「ウイグルを救え」と叫ぶ人を、「なぜウイグルだけをことさらに取り上げるのか」「どうせ、人権問題批判でなく単なる中国批判だろ」と軽視する向きもある。

「ウイグル話法」などという言葉もある。例えば東京五輪開催前の森元総理の発言に批判が殺到した際、「森発言でダメなら、ウイグル問題を抱える中国に五輪開催の資格はない」とする声がSNSなどで上がった。

するとそれに対し、「森辞めろ」派の一部は、「なんでもウイグルを持ち出せば相手を黙らせられると思っている『ウイグル話法』」と茶化したのだ。

しかし本書に書かれた「現実」を知ってなお、同じことを言えるだろうか。ウイグルでの人権抑圧は、現在進行形なのだ。

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