片山 マスコミが次亜塩素酸水について正確な情報を出さない弊害は非常に大きい。学童保育ではクラスターが発生してしまっています。学校であれば窓が多く換気しやすいですが、学童保育は換気しづらい建物に教室があることも多く、換気だけでは対処できないのです。次亜塩素酸水があったら絶対に大丈夫と言うつもりはありませんが、従来できていた自助努力ができないというのは如何なものでしょうか。
また、自衛隊の宿舎でもクラスターが出ていると聞きます。
福崎 自衛隊のなかでも、問題になっているのでしょう。以前、幕僚長から、次亜塩素酸水について関心があるので、ぜひ話を聞かせてほしいと連絡がありましたよ。
これだけ誤解が広まっても、次亜塩素酸水溶液を使用し続けている企業、施設もあります。たとえば予備校の河合塾では、全ての教室に次亜塩素酸除菌脱臭機を設置しており、いまだに感染者が出ていません。受験生にとって、健康維持は最重要課題ですからね。除菌脱臭機の近くの席は取り合いになるんだそうです(笑)。
といっても、除菌脱臭機の近くでなければ効かないというわけではなく、気化した次亜塩素酸は気体として空間すべてに行き渡ります。換気をしても、気体状次亜塩素酸の濃度は一定に保たれますから、噴霧器と換気の併用を私はおすすめしています。
次亜塩素酸は、コロナウイルスのスパイクタンパク質(人の細胞に付着しやすくするためのトゲトゲの部分)を損傷させ、感染力を下げるので、いま危険視されているデルタ株やラムダ株など変異株にも有効です。
片山 デルタ株の封じ込めに成功したと威張っている中国も、現地の映像を見ると、次亜塩素酸水を使っていますね。
最近、次亜塩素酸水について明るい話題もありました。ニプロという医療品メーカーの大手が、次亜塩素酸水の実験を行い、99・78%のヒトコロナウイルスの不活化に成功したのです。そのときの空間濃度は0・02~0・03ppmで、室内水泳プールの空中成分とほぼ同じ濃度でした。
福崎 屋内プールの空間と同じ濃度なのですから、もう誰も気体状次亜塩素酸を「危険だ」とは言えませんね。
片山 もうひとつ、明るいニュースがあります。議員連盟が先生や日本除菌連合と一緒になって厚労省に対して働きかけ続けた結果、厚労省が次亜塩素酸水の空間噴霧に関する方針を改め、それが10月21日付の事務連絡で全国に通知されたのです。いまは、エンドユーザーが自らの判断において噴霧使用することを妨げないとしています。
また、三省(厚労省・経産省・消費者庁)が連名で出していた次亜塩素酸水が危険だと思わせてしまう資料(ポスター)も、11月30日付で大きく修正されました。従来のものは赤字で否定的な表現を多用し、とても使用を推奨しているとは思えないもので、噴霧は危険だとか、ヒタヒタにしないと効かないとか、そのような科学的根拠が不明なことが書かれていました。
修正された資料では、そのような表記は全て削除されました。この事実が大きく取り上げられれば、国民の次亜塩素酸水への認識はガラッと変わりますよ。
福崎 私も事務連絡と新しいポスターを確認しました。画期的なことだと思います。ようやく科学的な視点から、次亜塩素酸水溶液の有効性と安全性を厚労省はじめ、各省庁にも認めていただけたと思っています。
おっしゃるように、この事実が大々的に取り上げられれば、世の中が大きく変わると思います。ただ、世間一般にまではこの事実がまだ周知されていません。
次亜塩素酸水溶液についての「サイエンス」はもうはっきりしているんです。次の問題は、どう「エンジニアリング」するか。いままでは「サイエンス」の部分が蔑ろにされ、極めて非科学的な論法があちこちでまかり通ってしまっていました。
役所やマスコミには、今回の各省庁による情報修正をきっかけにして、広まってしまった次亜塩素酸水に関する誤解や風評を払拭するために尽力してもらいたいと思います。そして今後は、本当に科学的な根拠に基づいて物事を判断していってもらいたいと思います。
(初出:月刊『Hanada』2022年2月号)
1959年、埼玉県生まれ。82年、東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。84~85年、フランス国立行政学院(ENA)留学。2005年、第44回衆議院議員総選挙にて初当選。18年10月~19年9月まで第四次安倍改造内閣にて内閣府特命担当大臣として地方創生・規制改革・女性活躍推進担当として各種政策に取り組む。現在、自民党総務会長代理、金融調査会長。
1991年3月、広島大学大学院醗酵工学科博士課程後期修了後、同年4月、岡山県工業技術センター入所。食品技術グループ長、研究開発部長を経て、2013年より現職。専門は、洗浄・殺菌工学、食品微生物学、生物化学工学、廃水処理工学。工学博士。