NHKスペシャル『発見 昭和天皇 御進講メモ』は放送局として完全アウト|和田政宗

NHKスペシャル『発見 昭和天皇 御進講メモ』は放送局として完全アウト|和田政宗

今年も終戦の日前後のNHKスペシャルが相変わらずおかしかった。7日放送のNHKスペシャル『発見 昭和天皇 御進講メモ』を見たが、放送局として完全アウトともいうべき内容だった――。


昭和天皇のお考えを勝手に解釈

元外交官の松田道一の「御進講メモ」をもとに番組は展開されたが、昭和天皇が御進講に対し何かをおっしゃっていなくても昭和天皇のお考えを勝手に解釈。加藤陽子、古川隆久、吉田裕各氏が解説をしたが、吉田裕氏は昭和天皇が戦争を主導したかのような主張を繰り返した。

特に、ドイツの降伏後に御進講を受けた昭和天皇のお考えを勝手に解釈した上で、「(占領国による)直接軍政になるかもしれない。日本も同じ扱いを受けるかもしれない。天皇制の存続も危ういかもしれない。切迫した状況の中で苦悩している」と解説したが、実際にはそうでないことは明らかである。

昭和天皇は御身のことは考えず、戦後のマッカーサーとの初会談で「私の一身はどうなろうと構わない」とおっしゃっている。これは当時の藤田尚徳侍従長の回顧録に記されている。

一部の人たちは、「藤田は直接会談に立ち会っておらず、あくまで伝聞で信憑性は低い」などと述べているが、日米双方からこの昭和天皇のお言葉について複数言及があり、「信憑性が低い」という主張はあてはまらず、吉田裕氏のように意図的なものを感じる。

そして、NHKはこのような番組作りを続けていれば、国民の信頼を失い、その存続すら危うくなるであろう。それは、この先、放送波の大改革が行われようとしており、ネット放送局を含めた競争になるからである。

受信料を投入、NHK役員の天下り先

現在、自民党の情報通信戦略調査会等で、インターネット時代の公共放送のあり方について議論が行われている。NHKのスリム化や受信料制度のあり方、ガバナンスについて、かなり突っ込んだ議論をしている。党内の中堅若手の議員は、放送波の大改革を必ずやり遂げなくてはならないと考えている人たちが増え、強い意志をもっている。

それは、将来の我が国における通信の発展を考えた際、周波数が枯渇するため、放送局が既得権として囲い込んでいる周波数を開放させなければ、日本は通信の発展どころか欧米にさらに差をつけられ、取り返しのつかないことになってしまうという危機感である。  

私はNHKをインターネットに本格進出させる代わりに、テレビは1波、BSは1波+将来的な技術発展のため8K放送の計2波とすべきであると考える。災害時等の緊急時における放送波を最低限確保した上で、Eテレなどはネット配信すればよい。民放についても同様の検討をしていかなくてはならないと考える。

放送衛星についても厳しく見ていかなくてはならない。放送衛星「B-SAT」を保有している株式会社放送衛星システムは、NHKが株式の49.9%を出資保有しており、現社長はNHKの専務理事が天下りしている。さらにNHKから年間16億円の売上収入を得ており、国民の受信料が流れている。

しかし、衛星は放送用単独である必要は決してなく、欧州の先端企業が打ち上げている衛星は通信・放送共用であり、我が国においても純民間資本でスカパーJSATが運用している「JCSAT」も通信・放送共用衛星である。

すでに純民間資本で通信・放送共用衛星が打ち上げられ運用されているなかで、受信料を投入し放送用単独の衛星を後継機として今後打ち上げるのかという論点が出てくる。純民間資本であるスカパーJSATは引き続き通信・放送衛星で打ち上げる方針を示しており、こうした衛星を活用すれば、受信料が投入されNHK役員の天下り先となっている株式会社衛星放送システムの役割も終了させることができる。

関連する投稿


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

参院法務委員会筆頭理事として、改正入管法の早期施行を法務省に働きかけてきた。しかしながら、改正入管法成立前から私に対する事実無根の攻撃が始まった――。


硫黄島をはじめ多くのご英霊の力で、今の日本がある|和田政宗

硫黄島をはじめ多くのご英霊の力で、今の日本がある|和田政宗

先の大戦有数の大激戦である硫黄島の戦いで、日米両軍合わせて2万9千人が亡くなった。今回の訪問で、硫黄島で戦った方々がどのような状況で、どのような思いで戦ったのかを、まざまざと知ることができた。


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


いきなり示された自民党改革案 このままでは承服できない!|和田政宗

いきなり示された自民党改革案 このままでは承服できない!|和田政宗

3月6日、党改革案がいきなり示された――。自民党はすでに国民の信頼を失っており、党運動方針案に示したように「解体的出直し」をしなければ生き残れない。


最新の投稿


【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

川勝知事が辞任し、突如、終幕を迎えた川勝劇場。 知事の功績ゼロの川勝氏が、静岡に残した「負の遺産」――。


【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。