枝野幸男代表はなぜ逃げたのか
(写真撮影/佐藤佑樹)
──2020年9月15日、立憲民主党との合流新党に参加しなかった国会議員が「新・国民民主党」を結成。立憲民主党と合流しなかった最大の理由は何ですか。
玉木 いっぱいあるんだけど(笑)。でもいちばん大きいのは、会社のM&Aもそうなんですが、社長と社長が最後は会わなきゃいけないのに、いまに至るまで公式な党首会談が実現していない。枝野さんは福島瑞穂さんとは会っているんですけどね(笑)。
合流するにせよしないにせよ、重要なのは腹を割ってトップ同士が話すことでしょ。何度も要請したのですが、最後まで実現しませんでした。
──なぜですか。
玉木 わかりません。この点は非常に残念です。我々はコロナ禍のなかで、いろいろな政策提案をしてきたという自負がある。「右だ」 「左だ」というかつての55年体制のようなことを国会のなかでやっても、国民から見たらなんの役にも立たない。
与党だろうが野党だろうが、この未曾有の危機に対しては、知恵がある者が知恵を出して、一人でも多くの国民を救うのが政治家だと思う。
10万円の定額給付金も、3月9日に私が最初に提案しました。最後は公明党がやったことになっていますが、大学生の学費猶予、家賃・住宅ローン支払い猶予など、ほかにも国民民主党発信の政策はたくさんあります。
時の権力を批判するのも野党の機能のひとつなんだけども、こればっかりに力を入れることは国民が求めていることからズレているんじゃないか。
政策提案型の改革中道政党としてやっていこうというのが我々国民民主党のスタンスであり、イデオロギーの前に、目の前にいる国民とか課題にもっと真摯に向き合う政治をやりたい。その志で集まったのが、新・国民民主党です。
イデオロギーでは飯は食えない時代ですよ。
──合流しなかった理由のひとつにイデオロギーの問題があった、と。
玉木 皆さんから見て、立憲民主党は左に寄って行っている感じがするのではないでしょうか。
仮に政権を取ろうとするのであれば、過半数の国民に支持されなければならない。国民のなかには左の人もいますが、やはり中道から穏健保守の国民から支持される政治集団をつくらなければ、政権なんて担えないし、担うべきではない。
正直、しんどいですよ。ある種の正論を貫いていこうというのは。選挙は大事だけれども、国民とどう向き合うか、政策がなければ国民の信は得られないでしょう。意外に見ていると思いますよ、国民は。
合流をめぐってあることないこと書かれましたが(笑)、この点も合流しなかった理由のひとつです。
戦略家だった安倍晋三前総理
──2019年4月、小沢一郎さん率いる自由党が国民民主党に合流しましたが、結局、小沢さんにぶっ壊された。
玉木 小沢先生はまあ……(笑)。小沢先生云々ではなくて、真ん中に集まってそれで党が大きくなっていくのはいいんですが、左に集まる形で大きくなっていっても左は共産党でつっかえているじゃないですか。
真ん中から右に右に展開していく形で拡張していかないと、政権は取れませんよ。自民党の支持層を崩さなければ政権は取れないんですから。
政治は数ですから大きくなることは否定しないけど、左方展開では未来はありません。安倍政権がうまかったのは、右を固めつつ左に展開していったこと。財政拡張や働き方改革などは、世界的に見れば左派政権がやることですよ。うまい戦略でしたね。
ですから、いまの野党は左を固めつつ右に展開しなければいけないのに、さらに左に行こうとしているように見える。
エネルギー政策にしても、原発に頼らなくてもいい状態なら頼らないほうがいいんだけれども、「原発ゼロ」をドーンと掲げて問題がすべて解決するわけではない。使用済み核燃料の問題や日米原子力協定があり、中国や韓国が原発を推進しているなかで、技術者が日本からいなくなっていいのか。
安全保障の観点、内外のさまざまな情勢、そういった現実的な課題に向き合いながらロードマップを示していく。我々国民民主党は、リアリズムを追求する政党でありたい。
──枝野代表、立憲民主党はなぜ提案型になれないのでしょうか。野党ですから政権を批判するのは当然ですが、批判ばかりで提案が何もない党に国民は投票する気にはなれない。
玉木 たとえば憲法の問題もそうですが、共産党との連携を重視するあまり提案ができなくなっているのではないでしょうか。本来、枝野さんは憲法改正論者だったのですが。
──『文藝春秋』(2013年10月号)で、かつて「改憲私案」を発表しています。
玉木 2017年に立憲民主党ができた経緯が「反小池」であり、選挙では共産党と調整を行った。このことが、ある種の制約になっている可能性はあると思います。