トイレの利用方法の啓発
感染症拡大防止策としては、小さな話だと思われるかもしれませんが、職場や公共の場所におけるトイレの利用方法についても、啓発活動を徹底することが必要です。
昨年から今年にかけてインフルエンザ患者数が激減したことから見ても、ほとんどの皆様がマスクの着用を徹底して飛沫感染を防ぐ努力をしたことについては、効果があったと考えられます。
他方、トイレについては、蓋を閉めて水を流さないとトイレの空間にウイルスが飛散すること、排泄後の石鹼を使った手洗いと手指消毒を徹底するべきことを、多くの方々に共有していただかなければなりません。
公共施設のトイレでも、ホームセンターなど民間施設のトイレでも、「蓋を閉めてから水を流して下さい」という貼り紙がある所とない所があります。医療の専門家である同僚議員が現状を心配しておられましたので、私も特に気になるようになったしだいです。
「ロックダウン」ができない日本
先日、全国知事会から内閣に対して「ロックダウンを可能にする法整備」を求める声が伝えられ、自民党の下村政調会長も検討を開始する意思を表明された旨が、報道されていました。日本には、いわゆる「ロックダウン」(都市封鎖・罰則付きの外出禁止命令など)を可能にする法律がありません。
仮に事態がさらに悪化して、人流抑制を目的に強制力と罰則を伴う法整備を行う場合には、「与野党合同の法制化検討チーム」を組織して、合意を得てから国会に提出する方法を採らなければ、憲法論議に膨大な時間を割くことになり、政治的には困難が多い課題だと感じています。
少なくとも日本国憲法第22条の「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」が関係してきます。日本国憲法が保障する基本的人権も絶対不可侵ではなく、「公共の福祉のため」に必要な場合に制約を加えることは、同条にも明示されています。憲法第12条、第13条にも、「自由」「権利」と「公共の福祉」との関係が記されています。
内閣法制局の職員に聞いてみましたら、「外出禁止という権利の制限が『公共の福祉のため』と言えるかどうかについては、具体的にどのような目的で規制を行うのか、規制を行う地域、人、物はどのような範囲に及ぶのか、その範囲は目的との関係で必要最小限のものといえるのか、等々をみて判断していくことになる」ということでした。
現時点では、「都市封鎖」(一定の地域を封鎖して出入りを規制する措置)を可能にするような法的根拠はありません。「外出を禁止し、違反者に罰則を科す」ような規定も存在しません。
特に「罰則」については、日本国憲法第31条が、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と定めています。よって、法律が制定されていない段階で、内閣がこれらの措置を行うことはできません。
国民の皆様の自由や財産を制限ないし侵害する行為には、法律の根拠が必要です。この原則は、日本国憲法の個別の条項に明記されているわけではありませんが、日本国憲法が採用する三権分立の考え方や法律をもって定めることを明記している個別の条項から、日本国憲法が当然の前提としているものと解釈されています。