中国国家ぐるみの犯罪と日本企業の大罪|山崎文明

中国国家ぐるみの犯罪と日本企業の大罪|山崎文明

JAXA攻撃の真相を突き止めた!日本および朝鮮半島を担当するハッキング集団「中国61419部隊」の女性軍人が依頼したのは「レンタルサーバーの契約」だった。レンタルサーバー無法国家・日本で今、中国の工作・情報窃取がかつてないほど深刻化している。


乗っ取られたサーバーは、コンピュータウイルスの遠隔操作に利用される(こうしたサーバーはコマンド&コントロール《C&C》サーバーやC2サーバーと呼ばれる)。  

コンピュータウイルスは、あらかじめこうしたC&Cサーバーと通信できるように細工されており、一度パソコンに感染するとC&Cサーバーと自動で通信を開始してしまう。  

A社に対しては、多くのセキュリティ会社がサーバーが乗っ取られていることを警告していた。2014年12月には公的機関である経済産業省の外郭団体、一般社団法人ジェイピーサート・コーディネーションセンター(JPCERT/CC)がA社にサーバーの乗っ取りを通知していた。   

JPCERT/CCは、日本国内で発生したセキュリティに関する事件の技術的情報を取りまとめるとともに、ネットワーク管理者と共有することを目的にした団体で、A社のサーバーに関しても早くから注視していた。  

A社に対して複数のセキュリティ会社が、「サーバーの脆弱性を解消するために、必要なら無償で技術協力する」とまで伝えていたが、A社から前向きな返答はなかった。セキュリティ会社の担当者は、「いまもA社のサーバーが悪用されている状況は変わっておらず、防止策を取らないのが不思議」と証言する。  

A社の担当者は、サーバーが遠隔操作に利用され、悪用されていることをセキュリティ会社から指摘されたことを認めたうえで「通信の秘密があり、サーバーが悪用されているか事前に検知することはできない。不審な通信が分かればできる限りの対策はしている」と話している(産経新聞2015年8月22日)。

だが、この言い分は実に奇妙で、意図的にサーバーが遠隔操作に利用されている状態を放置したとしか思えない。  

仮に通信の秘密の問題があったとしても、ネットワークを監視することは「違法性阻却事由」が認められており、「サーバーが悪用されているか事前に検知することはできない」との理由にはならない(「違法性阻却事由」とは、法律上は違法行為であっても目的が正義に反しなければ違法ではないとする考えで、正当防衛や緊急避難がこれに該当する)。  

事実、A社はネットワーク監視で有名な情報セキュリティ企業にネットワークの監視業務を委託しており、サーバーが悪用されていたことも分かっていたはずだ。

日本企業は中国共産党の配下か  

A社のサーバーをC&Cサーバーとして利用し、大規模なサイバー攻撃を仕掛ける手口は、セキュリティ会社によって「クラウディオメガ」(Cloudy Omega)攻撃(キャンペーン)と名づけられ、海外でも有名になっていた。  

2015年8月23日に台湾で開催された「ヒットコン」(HITCON)というハッカーのイベントでもこの問題は紹介され、日本のみならずハイテク企業が多く集まる台湾や金融都市シンガポールまでもが被害に遭っている、と報告されている。  

イベント参加者は、「乗っ取られたサーバーを長年放置しているA社は、中国共産党の配下にある企業ではないかとの疑いがある」とさえ話している。  

その結果として年金機構へサイバー攻撃が行われ、100万人以上の個人情報が、最終的には中国の都市、上海と瀋陽へ流出したのを筆者の所属する情報安全保障研究所では確認済みだ。  

中国のサイバー攻撃は、2015年までは他人が契約したレンタルサーバーの脆弱性を見つけ、それが見つかればC&Cサーバーに仕立て上げるという作業が行われていたが、脆弱なレンタルサーバーを見つけ出すよりも、自身で契約したレンタルサーバーのほうが何かと都合が良いことに気づいたのか、2016年以降は自身で契約したレンタルサーバーが用いられるようになった。  

ここでいう「自身」とは、ハッキングを仕掛ける側のことだが、自身で契約したレンタルサーバーは脆弱性を意図的に放置できるので、C&Cサーバーとして利用できる期間、すなわちハッキングできる期間が長いことや大量の個人情報や機密情報で容量が増えても誰も気に留めない、気づかれないなどメリットが大きい。  

国内のレンタルサーバーを偽名で契約する手口は、いまも増加している。  

レンタルサーバーの契約は、現在もクレジットカードさえあれば住所や氏名などが全くのでたらめでも、誰でも自由に契約できる。レンタルサーバーがたびたびサイバー攻撃に利用されていながら、なぜか規制しようとしないのが日本の実情だ。

中国国家ぐるみの犯罪

関連する投稿


人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国と対峙し独立を勝ち取る戦いを行っている南モンゴル。100年におよぶ死闘から日本人が得るべき教訓とは何か。そして今年10月、日本で内モンゴル人民党100周年記念集会が開催される。


「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】

「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】

月刊Hanada2025年9月号に掲載の『「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と日米安保条約に不満を漏らしたトランプ大統領。もし米国が「もう終わりだ」と日本に通告すれば、日米安保条約は通告から1年後に終了する……。日本よ、最悪の事態に備えよ!


日本人宇宙飛行士、月に行く|和田政宗

日本人宇宙飛行士、月に行く|和田政宗

今年の政治における最大のニュースは、10月の衆院選での与党過半数割れであると思う。自民党にとって厳しい結果であるばかりか、これによる日本の政治の先行きへの不安や、日本の昨年の名目GDPが世界第4位に落ちたことから、経済面においても日本の将来に悲観的な観測をお持ちの方がいらっしゃると思う。「先行きは暗い」とおっしゃる方も多くいる。一方で、今年決定したことの中では、将来の日本にとても希望が持てるものが含まれている――。


最新の投稿


報道すればヘイトなのか 黙殺されたクルド人犯罪|西牟田靖【2025年10月号】

報道すればヘイトなのか 黙殺されたクルド人犯罪|西牟田靖【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『報道すればヘイトなのか 黙殺されたクルド人犯罪|西牟田靖【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

「単なるデタラメと違うのは、多くの人にとって重大な関心事が実際に起きており、その原因について、一見もっともらしい『説得力』のある説明がされることである」――あの偉人たちもはまってしまった危険な誘惑の世界。その原型をたどると……。


埼玉クルド人問題から見えた自壊する自民党と躍進する参政党|石井孝明【2025年10月号】

埼玉クルド人問題から見えた自壊する自民党と躍進する参政党|石井孝明【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『埼玉クルド人問題から見えた自壊する自民党と躍進する参政党|石井孝明【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは  謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは 謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!