企業の大量倒産は失業者をたくさん生み出して深刻な経済問題・社会問題を作り出す一方、いままでは企業に気前よくお金を貸し出していた金融機関にも大問題をもたらす。企業に貸し出した巨額融資の多くが焦げ付き、不良債権と化すからである。あまりにも多くの不良債権を抱えることになれば、金融機関の大量破綻、すなわち金融危機発生の可能性が高くなってくる。
それが実際に起こると中国経済は悪夢のような結末を迎えるのだが、その一方、自らの破綻を恐れる金融機関は企業への融資を貸し渋る。それはまた、多くの企業を流動資金の不足による生産活動の停滞に追い込み、経済全体の落ち込みと成長の鈍化を招くことになる。しかも、金融機関の貸し渋りによって倒産する企業がさらに増えるのも必至である。
結局のところ、成長維持のための借金に頼った無暗なインフラ投資の拡大が深刻な巨額負債問題を作り出し、中国経済に破滅的な結末をもたらすことになる半面、このような結末を避けるべくして、政府主導あるいは金融機関の貸し渋りが一般的傾向となれば、金融という「経済の血液」を失った「失血死」の結末が、中国経済と中国企業には待ち構えている。
こうしてみると、借金頼りのインフラ投資の拡大は、まさに中国経済にとっての「死に至る病」の一つであることがよく分かるが、実はそれと並んで、将来における中国経済殺しの「下手人」となってくるのはまさに投資のもう一つの重要部門、不動産投資の拡大なのである。次回ではその点を詳しく解説する。(初出:月刊『Hanada』2021年7月号)
評論家。1962年、四川省生まれ。北京大学哲学部を卒業後、四川大学哲学部講師を経て、88年に来日。95年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。2002年『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)刊行以来、日中・中国問題を中心とした評論活動に入る。07年に日本国籍を取得。08年拓殖大学客員教授に就任。14年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。著書に『韓民族こそ歴史の加害者である』(飛鳥新社)など多数。