G7サミット開始前日の10日、バイデン大統領とジョンソン英首相は会談後に「新大西洋憲章」を発表した。1941年に当時のルーズベルト米大統領とチャーチル英首相が第2次世界大戦後の国際秩序を見通して発表した大西洋憲章にちなんで名付けたものだ。民主主義の原則や価値観、仕組みや開かれた社会を断固として守ると強調し、中国とロシアへの対抗姿勢を明確にした。会談後にバイデン大統領は米英の「特別な関係」を確認したと述べた。香港、ウイグル問題で中国を痛烈に批判してきたジョンソン首相に異論のあるはずがない。
21年前にリチャード・アーミテージ氏が知日派の学者、専門家16人で「米国と日本―成熟したパートナーシップに向けての前進」と題する第1回アーミテージ報告をまとめた。米英関係に倣って日米関係をつくり上げるべしという結論だった。米中対立が深まる中で、日本の存在価値は自然に上がってきたが、緊張感を欠いた今の日本に、国際社会で能動的なプレーヤーになる気概は残念ながら感じられない。( 2021.06.14 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
国家基本問題研究所副理事長。1933年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、時事通信社に入社。ハンブルグ特派員、那覇支局長、ワシントン支局長、外信部長などを務める。1992年から杏林大学で教鞭を執る。法学博士。杏林大学名誉教授。専門は国際政治。国家基本問題研究所副理事長。美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表。著書に『戦略家ニクソン』『激流世界を生きて』『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』など多数。