バイデン米大統領の表現に従えば、「民主主義体制と専制政治体制の対立」の中で、とかくぼやけがちな印象を与えていた民主主義陣営が、米国を中心にようやく形を整え始めたと見ていい。6月13日に発表された先進7カ国首脳会議(G7サミット)の共同宣言には、世界が当面する諸問題が盛り込まれたが、中心は「台湾海峡の平和と安定」ならびに「新疆ウイグル自治区での人権尊重」を中国に要求したことである。
米主導で民主主義国結束
サミットで中国に対して最も強硬だったのはバイデン大統領だ。ホワイトハウス記者団に対する米政府高官の背景説明で、中国の「一帯一路」構想(BRI)に対抗する巨額インフラ投資計画「ビルド・バック・ベター・ワールド」(B3W)が紹介されており、今回のサミットを前に、この構想が米政府内で周到に準備されていたことが分かる。
G7の中でも、イタリアはBRIに参加している。これまで中国に比較的厳しい態度を取っていたフランスは今回、首脳宣言で中国に刺激的な表現を避けるべきだと主張したようだ。が、首脳宣言で民主主義国の取るべき姿勢がより鮮明になった意味は小さくない。波紋は北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)に広がっていくからである。
中国に対する外交上の大戦略に基づいているのかどうかは不明だが、バイデン大統領はホワイトハウス入りする前の2020年に、フォーリン・アフェアーズ誌に「大統領に就任すれば1年以内に、米国は自由世界諸国の精神と共通目標の再考のため、世界『民主主義首脳会議』を組織し、主催国になる」と書いた。
同盟諸国を中心とした民主主義諸国を一つにまとめ、専制国家に対抗しようとの構想はここに原点があると考えられる。最近行われた日米首脳会談、米韓首脳会談、日豪「2プラス2」後の声明はいずれも中国を念頭に「台湾」がキーワードになっている。