主要メディアは「不都合な真実」を隠蔽
リベラルの影響力が強いシリコンバレーに本拠地を置くSNS企業などが、リベラル寄りなのは自然かもしれない。しかし、だからといってアメリカの社会に対する説明責任も果たさず、勝手に事実を「なかったこと」にしたり、印象操作を行ってよいということにはならない。
「(SNS企業が)トランプ大統領とニュース企業を監視し、アメリカ国民をないがしろにして民主党を利するよう、ゲームのルールを変えてしまった」
とクルーズ議員は言う 。その通りである。
片方の主張ばかりを「正確ではない」とレッテル張りする企業は、公共性の担い手として大きな課題が残る。それは、民主主義に対する巨大な脅威である。
主要メディアも、こうした「不都合な真実」を隠蔽する手法を、昨年の選挙では徹底採用した。2016年の選挙では、主要メディアもまだ、ヒラリー・クリントンの機密漏洩問題などをきちんと取り上げる公平さを持っていたが、今回は違う。
ジョー・バイデンの次男であるハンターについて、中国企業との不正な取引や脱税の疑惑があることを知りながら、大統領選挙が終わるまで報道しようとしなかったのが、その典型例だ。
ワシントンの政治専門誌である『ザ・ヒル』は、ハンター・バイデンの脱税問題を報道しなかった主要メディアの姿勢について、「情報を隠すというバイアスが、ひどく露骨な方法でとられた…(中略)…報道すべき価値のある情報が、意図的に抑圧されたり無視されたのだ」と指摘する 。
さらに、SNS企業はこのハンター疑惑について選挙中に投稿があっても、また「正確ではない可能性」を指摘し、人々の目に触れないようにした。
投票そのものに関する選挙不正とは違った角度だが、こうしたビッグ・テックやメディアによる、とうてい公平とは言えない選挙妨害が、トランプに対しては公然となされた。
そして民主党の動きと同調して、連邦議会への突入事件の責任を負わせるように、発言の機会すら奪い去ろうとしている。
ビッグ・テックは国家より危険だ
Twitterがアメリカ発の企業であるため、いまのアメリカ政治に関する限り、国内における私企業と国家や政治の戦いのように見える。
しかし、同社が同じことを他国の政治家や政府それ自体に対しても、全世界の個人に対してもできるという点には、我々は大いに警戒心を払うべきだろう。
このことにいち早く反応したのが、ヨーロッパの政治指導者だったという点は、興味深い。アンゲラ・メルケル独首相は、Twitterによるトランプのアカウント停止という手段に対し、表現の自由に関する問題は国家法によって統制されるべきだと批判した。
「表現の自由」という民主主義の基本条件であり基本的人権とみなされている事項と、社会の安定のためにこれと衝突する制約を科そうとするとき、国家は調整するための正統性を民主的に与えられている。日本国憲法にも明記されている、「公共の福祉」のための止むを得ない制約がそれであり、制度的にもどのような手続きをとり、どこまで実行できるかが定められている。
では企業はどうなのかというと、この民主的な正統性も、制度的な保障もない、というのが実情である。
あくまで利用者との契約や同意事項の範囲として、「サーヴィスの利用規約に反します」と言えば、気に入らない言論を締め出すことができる。
メルケル首相だけでなく、フランスのマクロン大統領など、他の首脳もこうした批判を展開しているものの、ビッグ・テック企業は正面から答えようとしない。そして、トランプのアカウントは凍結されたままだ。