ファーウェイ、Zoom、TikTok…核より怖い中国のサイバー兵器|山崎文明

ファーウェイ、Zoom、TikTok…核より怖い中国のサイバー兵器|山崎文明

日本は脆弱すぎる!世界で多発する中国の情報窃取。事件は既に日本でも起きている!ファーウェイ、Zoom、TikTok…核より怖い中国のサイバー兵器に食い物にされる日本の危うさ。


「中国製」で溢れる日本

Getty logo

本来なら、安全保障の根幹をなす通信機器やクラウドサービスはWTO(世界貿易機関)の「政府調達に関する協定」(GPA:Agreement on Government Procurement)「第3条 安全保障のための例外及び一般的例外」を根拠に、中国製品の排除は行えるはずだ。このWTO政府調達協定第3条は、自国の安全保障を脅かすものであれば、適用除外とすることができるとしている。  

ISMAP制度では、データセンターが日本国内にあることを条件に審査することになっているが、データの複製を中国に転送されるリスクがあることは、Zoomの例に見るように否めない事実である。  

ISMAP制度に則って、アリババなど中国のクラウドサービスベンダーが「ISMAPクラウドサービスリスト」に掲載されるようなことがあれば、逆に日本政府としてお墨付きを与えてしまうことになり、二度と中国排除とはなり得ないだろう。このような危険性を政府もメディアも国民も認識しているのだろうか。  

日本は大手通信キャリアからファーウェイ製品の排除を法的強制力のない通信会社の・自粛・という形で成し遂げたかのように見えるが、テンダのように中国製ルーターはいまも日本国内で平然と販売され続けているし、ファーウェイのパートナー企業として、現在も大手商社やNEC、ソニーなど錚々たる企業の子会社が名を連ねている(13)。  

さらに中国製スマートフォンやTikTokなどのアプリ、クラウドサービスは排除されていない。アリババが提供するアリババクラウドは家具量販店ニトリなどが使用を開始しているし、TikTokは日本でも人気だ。  

もし仮にルーターによる情報詐取が困難になれば、今後、中国はスマートフォンやアプリ、クラウドサービスを利用した情報詐取を盛んに行うだろう。“自粛”だけではすまない深刻な事態になる前に、政府には安全保障の観点からこの問題について真剣な検討を進めてもらいたい。  

世界が中国排除を打ち出すなか、このままでは日本だけが世界から後れを取り、中国の情報侵略に飲み込まれる危険性が極めて高い。事態は一刻の猶予も許されない時にきている。 (初出:月刊『Hanada』2020年10月号)

(1) https://www.trustwave.com/en-us/resources/blogs/spiderlabs-blog/goldenspy-chapter-4-goldenhelper-malware-embedded-in-official-golden-tax-software/

(2)https://www.federalregister.gov/documents/2020/07/14/2020-15293/federal-acquisition-regulation-prohibition-on-contracting-with-entities-using-certain

(3)https://www.jiji.com/jc/article?k=2019112601176&g=pol/https://star-secu.com/pack005.html

(4)https://www.gov.uk/government/speeches/digital-culture-media-and-sport-secretarys-statement-on-telecoms

(5)https://www.ncsc.gov.uk/guidance/ncsc-advice-on-the-use-of-equipment-from-high-risk-vendors-in-uk-telecoms-networks

(6)https://www.vice.com/en_us/article/z3ey3w/researchers-say-this-router-is-open-to-outside-attack-by-hackers

(7)https://mainichi.jp/articles/20160123/k00/00m/040/172000c

(8) https://www.govcert.cz/download/kii-vis/Warning.pdf

(9)https://investors.zoom.us/static-files/09a01665-5f33-4007-8e90-de02219886aa

(10)https://citizenlab.ca/2020/04/move-fast-roll-your-own-crypto-a-quick-look-at-the-confidentiality-of-zoom-meetings/

(11)https://www.zdnet.com/article/china-resurrects-great-cannon-for-ddos-attacks-on-hong-kong-forum/

(12)https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200603001/20200603001.html?from=mj

(13)https://partner.huawei.com/web/worldwide/channel-find-partner

著者略歴

関連する投稿


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と日米安保条約に不満を漏らしたトランプ大統領。もし米国が「もう終わりだ」と日本に通告すれば、日米安保条約は通告から1年後に終了する……。日本よ、最悪の事態に備えよ!


日本人宇宙飛行士、月に行く|和田政宗

日本人宇宙飛行士、月に行く|和田政宗

今年の政治における最大のニュースは、10月の衆院選での与党過半数割れであると思う。自民党にとって厳しい結果であるばかりか、これによる日本の政治の先行きへの不安や、日本の昨年の名目GDPが世界第4位に落ちたことから、経済面においても日本の将来に悲観的な観測をお持ちの方がいらっしゃると思う。「先行きは暗い」とおっしゃる方も多くいる。一方で、今年決定したことの中では、将来の日本にとても希望が持てるものが含まれている――。


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


最新の投稿


変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

自衛隊員の職務の性質上、身体的・精神的なストレスは非常に大きい。こうしたなかで、しっかりと休息できる環境が整っていなければ、有事や災害時に本来の力を発揮することは難しい。今回は変わりつつある現場を取材した。


【読書亡羊】雑誌「冬の時代」が過ぎて春が来る?  永田大輔・近藤和都(編著)『雑誌利用のメディア社会学』(ナカニシヤ出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】雑誌「冬の時代」が過ぎて春が来る? 永田大輔・近藤和都(編著)『雑誌利用のメディア社会学』(ナカニシヤ出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


昭和天皇と出光佐三の〝黙契〟|上島嘉郎【2025年9月号】

昭和天皇と出光佐三の〝黙契〟|上島嘉郎【2025年9月号】

月刊Hanada2025年9月号に掲載の『昭和天皇と出光佐三の〝黙契〟|上島嘉郎【2025年9月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


斎藤兵庫県知事を叩く消費者庁の正体|池田良子【2025年9月号】

斎藤兵庫県知事を叩く消費者庁の正体|池田良子【2025年9月号】

月刊Hanada2025年9月号に掲載の『斎藤兵庫県知事を叩く消費者庁の正体|池田良子【2025年9月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】

「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】

月刊Hanada2025年9月号に掲載の『「習近平失脚説」裏付ける二つの兆候|長谷川幸洋【2025年9月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。