ハリウッド版ゴジラのダメな点
しかし、ハリウッド版ゴジラはその良さを踏まえていない。ゴジラのかっこ良さを何故継承出来ないのか?
おそらくハリウッド側のプライドで日本のゴジラじゃなく自分達のデザインをしたい、という気持ちがあるからだろう。
もしも、日本のゴジラのシルエットを持ったゴジラだったら、ハリウッド版ゴジラももっと人気が出ただろうし、商品も売れると思う。ハリウッド版ゴジラの商品を見ても「どうしても欲しい」って気持ちにならないからね。
では、キングギドラはどうだったのか?
キングギドラに関しては、さすがに西洋のドラゴンの要素も入っているので悪くなかったと思う。だから、迫力もあってかっこいい。ただ残念なのは、キングギドラという怪獣の見せ場を作り切れていなかったことだ。
ハリウッド版キングギドラは嵐を引き連れて現れる。嵐と共に現れるキングギドラ。恐怖をイメージするので、この部分はいい。
だが、ずーっと暗い映像なのが問題。キングギドラは金色の怪獣だ。もしも自分が監督だったら、台風の目に入った瞬間、キングギドラの黄金の体が太陽光で輝くシーンを入れる。その方が神々しいし、キングギドラを見せられるからだ。
ハリウッド版ゴジラ映画は、怪獣同士のファーストコンタクトが駄目。怪獣同士のファーストコンタクトこそ最大の見せ場でもある。プロレスやボクシングで言えば選手入場の時と同じ。
ビッグマッチになればなるほど、選手入場は大興奮する場面だ。怪獣映画でも同じで、そこが大切なのにハリウッド版はダメ。ハリウッド版ゴジラのスタッフ陣を集めて大説教したくなるね。
ソフビ色々。上段中央がブルマァクハワイバージョン。
キングギドラが大人気の秘密
キングギドラが最初に登場したのは『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)だ。タイトルを見ただけでワクワクドキドキする。
その後は、
『怪獣大戦争』(1965)、『怪獣総進撃』(1968)、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972年)、平成に入って『ゴジラvsキングギドラ』(1991年)、『モスラ3 キングギドラ来襲(1998年)、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)
アニメ映画『GODZILLA 星を喰う者』(2018年)に登場し、『モスラ』(1996年版)ではデスギドラ、『ゴジラ FINAL WARS』ではカイザーギドラという亜種が登場した。これだけの映画作品に登場するのだから、キングギドラがスター怪獣であることがわかるし、ゴジラ最大の敵として皆が登場してほしいと願っているのだ。
キングギドラが大人気になったのは、ゴジラ同様、怪獣としてのかっこよさだ。キングギドラの顔を作ったのは利光貞三さん。利光さんは初代ゴジラから始まり、その後の東宝怪獣を作り続けた人である。ゴジラの顔の素晴らしさは利光さんの神業。その神がキングギドラの顔も作っている。
初期の東宝怪獣は金網で体の形を作り、その上に布やウレタンを貼っていく。金網はよき所で抜き取り、最後に表面を仕上げる。最初の金網で体のラインが決まっていくので、金網技術やセンスがずば抜けていることがわかる。
この金網作業をしたのが八木勘寿さん。八木さんは菊人形をやっていた人なので金網作業に長けていた。そういった技術があったから初期の東宝怪獣は美しかった。ちなみに金網での怪獣作りは発泡スチロールのブロックが登場するまで続いたそうだ。
初期と作り方は違えど、それを継承し進化させているので日本のゴジラなどは美しい。ハリウッドのスタッフに言いたい、怪獣を作るなら利光貞三さんと八木勘寿さんに学べ。
ゴジラやキングギドラの体を作った村瀬継蔵さんという人がいる。村瀬さんは特殊造形会社であるツエニーの創業者だ。昭和のキングギドラ制作に携わり、平成に入ってからは『ゴジラVSキングギドラ』に登場したキングギドラをツエニーで作っている。
この時のキングギドラのぬいぐるみは巨大だったようで、スーツアクターの破李拳竜さんに聞いたところ、体を横に回した時にピアノ線が切れたと言っていたから、大きさだけでなく重量も凄かったのだろう。生でぬいぐるみを見てみたかった。見られなかったことが残念。