なべやかん遺産|「キングギドラ」

なべやかん遺産|「キングギドラ」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「キングギドラ」!


「今日一日、どれくらい怪獣の事を考えましたか?」

一日の終わり、就寝する前に必ず自分自身に問う事がある。

「今日一日、どれくらい怪獣の事を考えましたか?」

「怪獣が好きだ」とか「特撮が好きだ」とか言っておきながら、一日の中で一回も考えないのであれば本当に怪獣が好きとはいえない。怪獣好きとして落第点。

一日の中でどれだけ“怪獣”を考えていたか、自分に問う事で「お前は怪獣が本当に好きなのだな。フフフ」と怪獣や特撮に憑りつかれた自分に笑みを浮かべる。まぁ、いわゆる病だな。(笑)

怪獣や特撮を考えると言っても、それら全般を考えるわけではない。その時々によるマイブームがあり、ゴジラやウルトラマンの時もあれば、等身大の仮面ライダーや戦隊シリーズの時もある。最近はハリウッド映画のアイアンマンやエイリアンやターミネーターであることが多い。

ハリウッド映画関係を考える時間が多かったとしても、基本であるゴジラやキングコングなどを考えない日は無いので、やっぱり巨大生物が好きなのだと自覚している。そういった事を一日の終わりに思うのだが、ここ最近はキングギドラの事を考える時間が一番多かった。
 
キングギドラは首が3つ、尻尾が2本、巨大な羽があって金色というゴージャスな怪獣だ。キングギドラは西洋のドラゴンでありアジアの龍である。
 
キングギドラの事を考える時間が多かったのは、CS放送で『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)を観たからだ。ハリウッド映画でゴジラ作品が作られるのはとても嬉しい。毎回劇場でちゃんと観ているのだが、不思議でしょうがないのがアメリカ人にはゴジラの姿がどう見えているのかということだ。

アメリカにもゴジラファンは沢山いる。おそらく彼らがゴジラを好きな理由は、日本のゴジラを見てかっこいいと思ったからだろう。歴代の日本のゴジラは作品によってデザインなどが違っているが、ゴジラとしてのプロポーションはちゃんと保たれていた。

村瀬さんのキングギドラ。美しすぎる。台座も立派。

裏側には村瀬継蔵さんのサインを書いていただいた。

台座サイン中の村瀬さん。

ハリウッド版ゴジラのダメな点

しかし、ハリウッド版ゴジラはその良さを踏まえていない。ゴジラのかっこ良さを何故継承出来ないのか?

おそらくハリウッド側のプライドで日本のゴジラじゃなく自分達のデザインをしたい、という気持ちがあるからだろう。

もしも、日本のゴジラのシルエットを持ったゴジラだったら、ハリウッド版ゴジラももっと人気が出ただろうし、商品も売れると思う。ハリウッド版ゴジラの商品を見ても「どうしても欲しい」って気持ちにならないからね。
 
では、キングギドラはどうだったのか?
キングギドラに関しては、さすがに西洋のドラゴンの要素も入っているので悪くなかったと思う。だから、迫力もあってかっこいい。ただ残念なのは、キングギドラという怪獣の見せ場を作り切れていなかったことだ。
 
ハリウッド版キングギドラは嵐を引き連れて現れる。嵐と共に現れるキングギドラ。恐怖をイメージするので、この部分はいい。

だが、ずーっと暗い映像なのが問題。キングギドラは金色の怪獣だ。もしも自分が監督だったら、台風の目に入った瞬間、キングギドラの黄金の体が太陽光で輝くシーンを入れる。その方が神々しいし、キングギドラを見せられるからだ。
 
ハリウッド版ゴジラ映画は、怪獣同士のファーストコンタクトが駄目。怪獣同士のファーストコンタクトこそ最大の見せ場でもある。プロレスやボクシングで言えば選手入場の時と同じ。

ビッグマッチになればなるほど、選手入場は大興奮する場面だ。怪獣映画でも同じで、そこが大切なのにハリウッド版はダメ。ハリウッド版ゴジラのスタッフ陣を集めて大説教したくなるね。
 

ソフビ色々。上段中央がブルマァクハワイバージョン。

キングギドラが大人気の秘密

キングギドラが最初に登場したのは『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964)だ。タイトルを見ただけでワクワクドキドキする。

その後は、
『怪獣大戦争』(1965)、『怪獣総進撃』(1968)、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972年)、平成に入って『ゴジラvsキングギドラ』(1991年)、『モスラ3 キングギドラ来襲(1998年)、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)

アニメ映画『GODZILLA 星を喰う者』(2018年)に登場し、『モスラ』(1996年版)ではデスギドラ、『ゴジラ FINAL WARS』ではカイザーギドラという亜種が登場した。これだけの映画作品に登場するのだから、キングギドラがスター怪獣であることがわかるし、ゴジラ最大の敵として皆が登場してほしいと願っているのだ。
 
キングギドラが大人気になったのは、ゴジラ同様、怪獣としてのかっこよさだ。キングギドラの顔を作ったのは利光貞三さん。利光さんは初代ゴジラから始まり、その後の東宝怪獣を作り続けた人である。ゴジラの顔の素晴らしさは利光さんの神業。その神がキングギドラの顔も作っている。
 
初期の東宝怪獣は金網で体の形を作り、その上に布やウレタンを貼っていく。金網はよき所で抜き取り、最後に表面を仕上げる。最初の金網で体のラインが決まっていくので、金網技術やセンスがずば抜けていることがわかる。

この金網作業をしたのが八木勘寿さん。八木さんは菊人形をやっていた人なので金網作業に長けていた。そういった技術があったから初期の東宝怪獣は美しかった。ちなみに金網での怪獣作りは発泡スチロールのブロックが登場するまで続いたそうだ。

初期と作り方は違えど、それを継承し進化させているので日本のゴジラなどは美しい。ハリウッドのスタッフに言いたい、怪獣を作るなら利光貞三さんと八木勘寿さんに学べ。
 
ゴジラやキングギドラの体を作った村瀬継蔵さんという人がいる。村瀬さんは特殊造形会社であるツエニーの創業者だ。昭和のキングギドラ制作に携わり、平成に入ってからは『ゴジラVSキングギドラ』に登場したキングギドラをツエニーで作っている。

この時のキングギドラのぬいぐるみは巨大だったようで、スーツアクターの破李拳竜さんに聞いたところ、体を横に回した時にピアノ線が切れたと言っていたから、大きさだけでなく重量も凄かったのだろう。生でぬいぐるみを見てみたかった。見られなかったことが残念。
 

キングギドラ出演作品の台本。両サイドのウロコがツエニー製。

ウロコを一枚ずつ貼り付け

キングギドラを作り、直に見て来た村瀬さん監修のもと初代キングギドラの頭が再現された。

当時の塗装、髭の素材にも拘って作られている。最初にこの頭を見た時、普通にかっこいいと思った。でもその後がこの頭の凄いところで、見れば見る程かっこよくなっていく。

だからずっと見ていられるのだ。自分は完璧な下戸だが、もし酒が飲めるのなら一晩中この頭を見ながら酒を飲み続けるだろう。キングギドラ関連商品としては、究極の一品といってよいだろう。
 
その他、キングギドラグッズでは、平成ゴジラ映画の台本やツエニーで作られた平成ギドラのウロコがある。ツエニーの皆さんにウロコを見せたら「懐かしいな。一枚一枚貼り付けたよ」と喜んでいた。
 
キングギドラは様々な作品に登場するので、作品それぞれのソフビが発売されている。発売されると「買わないといけない」という使命感もあり、増え続ける。

そんな数あるソフビの中で一番オーソドックスなのはブルマァクのキングギドラ。ブルマァクのキングギドラが発売されたのは今から約50年前。そう考えると古いよね。

ハワイバージョンと呼ばれるハワイ輸出版も色が爽やかでお気に入りの一品。良い怪獣を生み出せば50年経ってもソフビ人形が輝き続けるので、そういった怪獣作りをハリウッドも目指してもらいたい。
 
怪獣映画を作りたいと考えている皆さん、村瀬さんのキングギドラを手に入れて長い時間見つめていてみてよ。毎日見つめる事で見えてくる事が色々あるから。そんな時間を過ごしてから、ハリウッドのスタッフの皆さんも怪獣映画を作りましょうね。

キングギドラ色々。ソフビ類はまだまだあるが今回はこれくらいで

なべやかん

https://hanada-plus.jp/articles/304

昭和45年8月22日生まれ。たけし軍団初の2世タレントとして、91年デビュー。趣味の特撮キャラ収集では、30年以上前から専門誌やイベントで資料提供している。主催のお笑いライブは、個人主催では最長記録である。

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