【ポストコロナの憲法論】国民の命を守るため緊急事態条項を憲法に明記せよ|加藤伸彦

【ポストコロナの憲法論】国民の命を守るため緊急事態条項を憲法に明記せよ|加藤伸彦

憲法に「緊急事態条項」がない……新型コロナウイルスの感染拡大によって露呈した日本の「国家としての脆弱性」。さらなる感染症の猛威や災害、テロの脅威から国民の命を守るため、憲法に「緊急事態条項」を盛り込むことはもはや待ったなしの状況だ!ポストコロナの憲法論議は国会議員の責務だ!


緊急事態の宣言は新型インフルエンザ特措法だけではない

また、外国などからの武力攻撃に対応するのが「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」、いわゆる「国民保護法」だ。この法律でも、医薬品や食品などの収用命令、避難指示、通行禁止措置など、様々な規制措置が盛り込まれている。  

このほか「原子力災害対策特別措置法」でも、首相が「原子力緊急事態宣言」を出すことができる。東日本大震災による東京電力福島第一原発事故で、当時の菅首相は2011年3月11日午後7時すぎ、この原子力緊急事態宣言を発令している。ちなみにこの宣言は、いまもなお解除されていない。

以上のように、国民の生命・財産を保護し、国民生活への影響を最小限にするための法律はいくつもある。首相が緊急事態を宣言するのも、新型インフルエンザ特措法だけではない。

枝野幸男代表の驚くべき無理解

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さて、立憲民主党の枝野幸男代表は、憲法記念日にあたり、新型コロナウイルス感染症に触れて次のようなメッセージを出している。 

「(災害対策基本法の)『立入禁止の命令』等には違反者に対する罰則の規定もあります。万が一、こうした手続きが必要になった場合でも、災害対策基本法の『災害』に『新型コロナウイルス感染症とそれによる社会経済活動の停滞』を加えれば、場合によっては法改正すら必要ありません。ましてや、憲法の制約で、やるべきことができないということはまったくありません」  

枝野氏の論旨は、もし新型コロナ感染症で何らかの施設などの立ち入り禁止措置が必要になるにしても、災害対策基本法を活用すればよい、というものだ。憲法に緊急事態を規定していなくても簡単にできる、というわけだ。  

もちろん、法手続き的にはそれも可能なのだろうが、国民の権利を一定程度制限するという重大な措置を行うことに、「他の法律を活用すればよい」という考え方でいいのだろうか。「場合によっては法改正すら必要ありません」というなど、国民の権利の重要性について無理解にもほどがある。

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