【ポストコロナの憲法論】国民の命を守るため緊急事態条項を憲法に明記せよ|加藤伸彦

【ポストコロナの憲法論】国民の命を守るため緊急事態条項を憲法に明記せよ|加藤伸彦

憲法に「緊急事態条項」がない……新型コロナウイルスの感染拡大によって露呈した日本の「国家としての脆弱性」。さらなる感染症の猛威や災害、テロの脅威から国民の命を守るため、憲法に「緊急事態条項」を盛り込むことはもはや待ったなしの状況だ!ポストコロナの憲法論議は国会議員の責務だ!


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「先ほど諮問委員会のご賛同も得ましたので、特別措置法第32条に基づき、緊急事態宣言を発出することといたします。対象となる範囲は、関東の一都三県、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、関西の大阪府と兵庫県、そして九州の福岡県であります」  

2020年4月7日午後7時過ぎ、首相官邸で記者会見した安倍晋三首相は、こう述べた。日本にとって、戦後初の“緊急事態”だ。宣言を発表した安倍首相の表情は、やや上気しているように見えた。  

首相が説明したように、今回の緊急事態宣言は、特措法第32条に基づくものだ。宣言の内容や経過については散々報道されているのでここでは割愛するが、この法律の特徴は二つある。

・方針を決めるのは政府、国民への要請を決めるのは地方自治体と役割が明確に分かれている

・罰則規定がない

罰則を設けない、いかにも民主党的な法律

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政府の対策本部が「基本的対処方針」を策定し、緊急事態の宣言も対策本部長である首相が行うが、住民に自宅に留まることや商業施設の休業などの要請は都道府県知事が行う。  

新型インフルエンザ特措法は2012年4月27日に成立しているが、当時は民主党政権下だ。地方分権的視点を取り入れ、罰則も設けないなど、いかにも“権利”や“人権”を重視する民主党的だ。  

平時とは異なり、国民の生命が危機に晒されるという緊急事態であっても、罰則がないことの是非は今後、論じられるべきだ。  

国民の生命・財産を保護し、国民の生活に及ぼす影響を最小にするための法律は、新型インフルエンザ特措法だけではない。災害対策基本法や国民保護法などにも、国民の生活を制限するための規定がある。  

災害対策基本法は第105条で、首相による「災害緊急事態の布告」を規定している。災害緊急事態に基づく緊急措置として、生活必需物資の配給などの制限や、金銭債務の支払猶予、海外からの支援受入れなどの緊急政令を制定できる。  

さらに、緊急通行車両以外の通行禁止や、医療・土木建設工事・輸送関係者への従事命令のほか、屋内退避の指示や立ち入り禁止の命令など、様々な規制措置を盛り込んでいる。

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