「実子誘拐ビジネス」の闇 人権派弁護士らのあくどい手口|牧野のぞみ

「実子誘拐ビジネス」の闇 人権派弁護士らのあくどい手口|牧野のぞみ

「10年前の今日(5月6日)、娘が誘拐された――。2歳だった娘は、いまや中学生である」。突然、愛するわが子を奪われた父親(A氏)。彼の身に、いったい、なにが起きたのか。その背後には、連れ去り勝ち、虚偽のDVなど「実子誘拐」の方法を指南する人権派弁護士らの暗躍があった――。愛する娘を奪われた父親が、魂の告発!日本で日常的に行われている「実子誘拐ビジネス」の闇に迫る!


「連れ去り勝ち」の無法地帯

離婚時の親権をめぐっては、松戸判決と呼ばれる重要な裁判がある。

A氏は実は、この松戸判決の当事者だ。2歳で連れ去られた娘の親権をめぐり、2016年3月の一審判決では「自分が親権者となった場合に母親である妻に年間100日程度娘と面会させることを約束し、それを自らが破った場合には親権を妻に渡す」ことを提案したA氏を親権者として相応しいと判断し、A氏に親権を認めた。

それまでの裁判所の先例では、面会交流は月に1回数時間、監視付きが相場で、親権者を認める際には「継続性の原則」という慣例により、同居している親を優先していた。

そのなかで松戸判決は、子どもが両親の愛情を受けて健全に成長することを可能とするため、「より寛容な親」を優先する「フレンドリーペアレント・ルール」を採用した画期的な判決として注目された。大岡越前の「子争い」を彷彿とさせる名判決として、多くのメディアが評価していたものである。

しかし、2017年1月の二審東京高裁判決では一審判決を覆した。

裁判官は「実子連れ去りをした親に親権を与える判決を下す」と述べたが、そのような判決を下すために必要な理屈が、悪名の高い「継続性の原則」である。

この原則に基づくと、一方の親を欺き留守中に子どもを誘拐し、その後、子どもともう一方の親との接触を徹底的に断ち切った親が親権者として認められることになる。この原則は、法律上どこにも根拠はない単なる裁判所の慣例である。

むしろ、「連れ去り勝ち」を生むものであり、他の先進国でこのような子どもの利益に反する慣例を裁判所で採用している国は皆無である。

二審東京高裁判決で裁判官は、継続性の原則を採用したうえで「フレンドリーペアレント・ルール」を明確に否定し、A氏の妻を娘の親権者とする判断を下した。判決文には「親子の面会の重要性は高くない。年間100日の面会は近所の友達との交流などに支障が生ずるおそれがあり、子の利益になるとは限らない」との記載がある。

同年7月、最高裁はA氏側の上告を不受理とし、確定となった。本来、一審と二審とで法律判断が分かれた場合、最高裁は受理し、審議しなければならない。しかし、最高裁は不受理を決定し、審議すら拒否した。その決定を下した裁判長は鬼丸かおる。弁護士出身の裁判官である。

日本は「子どもの拉致国家」

Getty logo

北朝鮮だけではない――。世界が日本を非難!

国際的には、日本は「子どもの拉致国家」であり、その元凶が司法にあるとの認識が定着しつつある。

米連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配犯リストでは、米国人の元夫に無断で子どもを連れて日本に帰国した日本人女性の名前が、テロリストと同様に扱われている。

米国ではこの10年近く、議会において何度も公聴会が開催され、日本の司法がこのような「実子誘拐犯」の引き渡しに応じないだけでなく、「誘拐犯」に親権を与えるなどの行為を行うことで「実子誘拐」を助長している、と繰り返し非難している。

また、米国務省は、2018年に出した「国際的な子どもの拉致」年次報告書で、日本を国際的な子どもの誘拐を禁ずる「ハーグ条約」の不遵守国と認定した。

同年3月には、26人のEU加盟国大使が、親に会う子どもの権利を尊重するよう日本に訴えかける文書を出した。昨年6月にはフランスのマクロン大統領が安倍首相に、「実子誘拐」について問題提起したうえで、「容認できない」と言及した。

イタリアのコンテ首相もまた、同月に開催されたG20のグループ会議で、子どもに対する両親の権利について安倍首相に懸念を表明した。

今年の1月に、オーストラリア政府が日本の法務省に対し、家族法を改めるよう要請したとの報道もある。

これだけ諸外国政府から非難されている背景には、日本人による「実子誘拐」と日本の司法の実態が繰り返し海外で報道され、対日感情が悪化している背景がある。

「日本の司法システムを批判する論調が支配的なフランスでは、ゴーン前会長の逃亡容認論が根強い。仏紙フィガロが『ゴーン氏が日本から逃げ出したのは正しかったか』と読者に尋ねたところ、正しかったと応じた人が77%に上った」

と伝える記事を最近見かけたが、フランスにおいて日本の司法システムを批判する論調が支配的となってしまった原因の一つに、「実子誘拐」の問題があると考えられる。

この松戸判決が東京高裁で覆されることがなく最高裁で確定していれば、あるいは最高裁が東京高裁の判決を覆していれば、日本で「実子誘拐ビジネス」はできなくなり、現在、ここまで諸外国から批判を受けることもなかったはずである。

一刻も早く、この悪名高い「継続性の原則」をやめさせ、裁判所を子どもの利益を第一に考える場にしなくてはならない。

しかし、なぜこれほど外国から批判される「実子誘拐」が日本で社会問題とならないのであろうか。その理由は、A氏のケースを見ることでよく分かる。

関連する投稿


ミツカン「種馬事件」、再び、敗訴|西牟田靖

ミツカン「種馬事件」、再び、敗訴|西牟田靖

2013年、中埜大輔さんは、ミツカンの創業家出身のオーナー経営者である中埜和英会長の次女、聖子さんと結婚、翌年には男の子が誕生した。だが、彼の人生は義父母によって破壊された。生後4日目の子供を義父母の養子に差し出すよう強要されたのに始まり、別居の命令、離婚の強要、親子引き離し(実子誘拐)を目的とした日本への配転、告発報道の取材に応じたことを理由に即日解雇――。まるで中埜一族に「種馬」のように使われ、放り出されたのだ。


夫婦間レイプで禁固11年! 不同意性交罪という悪夢|荻原岳彦(東京拘置所被収容者)

夫婦間レイプで禁固11年! 不同意性交罪という悪夢|荻原岳彦(東京拘置所被収容者)

私は妻への夫婦間レイプを否認しましたが、2018年3月22日に英国で有罪判決、11年の実刑となってしまったのです。最終的には4年8か月を英国で服役したのち、昨年、2022年11月11日に釈放、日本への帰国となりました。しかし、11月12日に成田空港に到着すると、警視庁愛宕署の刑事がおり、その場で逮捕されました――。


中国によって「自由」を奪われたモンゴルの惨状|山田宏×エンフバット・トゴチョグ

中国によって「自由」を奪われたモンゴルの惨状|山田宏×エンフバット・トゴチョグ

モンゴルで起きている現実は明日の日本でも起こる。中国による人権弾圧を20年以上にわたって訴え続けてきた南モンゴル人権情報センターの代表が7年ぶりに緊急来日。今モンゴルで何が起きているのか? 南モンゴルを支援する議員連盟幹事長の山田宏参議院議員と緊急対談を行った。


「共同親権」を潰す赤いネットワークと北朝鮮の家族法|池田良子

「共同親権」を潰す赤いネットワークと北朝鮮の家族法|池田良子

日本共産党や社民党に近い「赤いネットワーク」はなぜ、離婚後共同親権制に反対するのか。彼らの本当の目的は、「離婚後も男性による女性と子供の支配が継続することを断固阻止する」ことにある――。(画像は駒崎弘樹氏twitterより)


ミツカン「種馬事件」 まさかの敗訴|西牟田靖

ミツカン「種馬事件」 まさかの敗訴|西牟田靖

2013年、約1年間の交際を経て、中埜大輔さんは、幸せな家庭を築けると信じて聖子さんと結婚する。だが、彼の人生は義父母であり、ミツカンの会長・副会長でもある和英・美和氏によって破壊された――。


最新の投稿


【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

川勝知事が辞任し、突如、終幕を迎えた川勝劇場。 知事の功績ゼロの川勝氏が、静岡に残した「負の遺産」――。


【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。