「素養」も「資格」もない “ある種”ジャーナリスト青木理|藤原かずえ

「素養」も「資格」もない “ある種”ジャーナリスト青木理|藤原かずえ

安倍政権は「極右反動のウソつき恥知らず政権」であり、「何があっても支持する連中はまるで新興宗教の信者。ならばそうした連中は極右反動のウソつき恥知らず教――長いので略せば『アホダラ教』の信者か」と『サンデー毎日』(2月23日号)で意味不明な珍説を披露した青木理氏。「気骨のジャーナリスト」と持ち上げるメディアもあるが、本当にそうなのか。青木理氏の言説【国内政治編】を論理的に分析!“ある種”ジャーナリストの正体とは…。


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「森友問題」無知に基づく論証

〈森友問題〉
籠池氏は、首相夫人の昭恵氏に適時報告していたと証言した。安倍氏は「私や妻が何らかの形でかかわっていたら、私は首相も議員も辞める」と言った。安倍氏がやることは二つだ。一つは辞めるか、もう一つはそうでないのなら反証をきちんとすることだ。どちらもしないというのは納得できない(サンモニ、17年4月30日)。

[注釈]一見してこの言説は、「首相夫人がかかわっていたら安倍首相は辞任しなければならない」(大前提)→「首相夫人はかかわっていた」(小前提)→「安倍首相は辞任しなければならない」(結論)という三段論法に見えますが、実際には単なる詭弁にすぎません。

大前提の「かかわっている」は「問題にかかわっている」という意味であり、小前提の「かかわっている」は「籠池氏にかかわっている」という意味、論証が成立しないからです。首相夫人は籠池氏にかかわっている証拠はありますが、問題にかかわっている証拠はありません。
 
正しい三段論法では「安倍氏」 「夫人がかかわっている」 「辞任する」という三つの概念を連携させて結論を導きますが、この言説では「安倍氏」 「夫人が籠池氏にかかわっている」 「夫人が問題にかかわっている」 「辞任する」という四つの概念を連携させています。

これは【四個概念の誤謬 four-term fallacy】と呼ばれる論証不全です。

〈憲法改正〉
安倍氏は憲法を変えたいんだ。はっきり言えばどこでもいい。憲法を守らなければならない最高権力者が「とにかく変えたいんだ」と言って変えるということは、はたしてよいのか(サンモニ、17年6月25日)。

[注釈]この言説も、「安倍氏は憲法を守らなければいけない」(大前提)→「安倍氏は憲法を守らずに変えたい」(小前提)→「安倍氏はよくない」(結論)という三段論法に見えますが、実際には四個概念の誤謬です。

大前提の「守る」は憲法を遵守するという意味の「遵る」、小前提の「守る」は守護するという意味の「護る」であり、論証が成立しないからです。
 
総理大臣は、憲法99条の規定により憲法を遵守する義務がありますが、憲法を改正から守護したとしたら憲法96条違反です。

青木氏が、このような憲法の意味を理解しないでこの言説を主張していたとしたらジャーナリストとしての素養はなく、理解して主張していたとしたらジャーナリストとしての資格はありません。

〈森友問題〉
森友問題は、きちんと記録さえ残して公開していれば一発で解決している問題だ。それが官僚の忖度、あるいは政権の指示なのか、ここまで隠されると、後者だったのではないかと思われても仕方がない(サンモニ、18年2月18日)。

[注釈]これは、前提の真が証明されていないことを根拠に、その言説は偽であると主張する【無知に基づく論証 argument from ignorance】という誤謬です。

「ある種」連発で完璧な印象操作

青木氏は、しばしば前提となる情報を歪曲して結論を導きます。

〈相模原障害者施設殺傷事件〉
この事件がいまなぜ起きたのか。弱者や少数者に対して、ヘイトスピーチを含めてひどいことをしている社会、ある種、政治がそれを追認しているのではないか。

政治の在り様がこの事件に投影されているのではないかということを、裁判の過程で僕らは考えていかなければいけない(サンモニ、17年2月26日)。

[注釈]青木理氏は言説において、「ある種」という言葉を極めて頻繁に使用します。この言葉には、実際にはそうではないことを、あたかもそうであるかのように曖昧に印象付ける効果があります。

この例では、この【曖昧な言葉使い weasel wording】を悪用して、政治がヘイトスピーチを追認し、それが相模原障害者施設殺傷事件の原因になったかのように【心理操作 psychological manipulation】して、それを前提としています。

〈前川喜平氏〉
前川喜平氏は、僕自身の感想だが、ある種、爽やかと言ったら言い過ぎかもしれないが、正義感、それからある種の誠意というか、こういう官僚もいるんだなと。「あるものがないというのはおかしい」という素直な憤り、正義感というのを僕は憶えた。

少なくとも文科省側は、「加計学園をやれ(採用しろ)」ということを共通認識として持たされていた、と前川さんが言っているのは事実だと思う。
 
安倍総理が野党に「印象操作」とよく言うのは、自身が印象操作をしているという印象があって、たとえば前川さんが出会い系バーに通っていたというのも印象操作だ(Mショー、17年5月30日)。

[注釈]青木氏が展開しているのは、「爽やか」 「正義感」 「誠意」という青木氏個人が造り上げた前川氏の人格に関する好印象を根拠にして結論を導く【人格論証 ad hominem】に他なりません。これを印象操作と言います。
 
前川氏が出会い系バーに通っていたのは、本人も認める事実です。「安倍総理が野党に『印象操作』とよく言うのは、自身が印象操作をしているという印象がある」というのも完璧な印象操作です(笑)。

〈独裁に走る社会〉
独裁であればあるほど、市民社会は不自由になっていく。たとえば中国がそうだし、その究極型が北朝鮮だ。

他人事でなく、日本も一強とか官邸主導と言われている状況が続いていて、たとえば森友・加計学園の問題で、ある種、支援者だったり友人を依怙贔屓しようとしたら、官僚も忖度して公文書まで改竄したりとか、首相の御意向で行政が歪んだということが起きている。

日本でもある種、非常に右派的なポピュリズムを望む人たちが現政権を支えて、一強の下でこういうことが起きた(サンモニ、18年3月25日)。

[注釈]政治体制が全く異なる日本と中国・北朝鮮を【根拠薄弱なアナロジー weak analogy】で無理矢理に類比し、「ある種」という言葉で、安倍政権が独裁政権であるというメディアが造った非常識な印象を無理矢理に事実認定しています。

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