青木氏は、しばしば問題の論点を変更することで、前提を無視して結論を導きます。
〈衆院選自民党圧勝〉
ある種、有権者は正直で、「今回の選挙、何なんだ」とよくわからないまま投票に行かなかったという選挙で、こういう形が出た。(自民党には)これで胸を張られても困るから謙虚にやってほしい。
麻生氏の「北朝鮮のおかげ」発言は謙虚のカケラも見られなかったし、野党の質問時間を少なくして謙虚のカケラもない(サンモニ、17年10月29日)。
[注釈]自民圧勝の選挙結果について訊かれた青木氏は、「正直な有権者が棄権したため」とする根拠のない言説を根拠にして、国民の民意を否定したうえで、さりげなく【論点変更 shifting to another problem】し、自民党は謙虚のカケラもないという結論を導きました。自己防衛のための論点変更です。
〈日大アメフト問題〉
日大アメフトの問題は、トップが責任をとらず、中間は上を守って責任を下に押し付け、下が一番苦しむという意味で、まさにどこかの話と同じだ。この問題、テレビのワイドショーが物凄くやっている。一方で、モリ・カケは飽きているみたいな風潮がある。
ある種、政治のほうでスッキリしないのをこっちのほうで、ある種、溜飲を下げるというか、同じことが起きている物語になっている面もあるのかな(サンモニ、18年6月3日)。
[注釈]いかなる事案でも、最後には「アベが悪い」という結論を導く典型例です。他者攻撃のための論点変更です。
本稿で示したように、青木氏の言説には広範にわたる多くの誤謬が含まれています。仮に青木氏が安倍政権を公平にチェックしているのであれば、その誤謬はときに安倍政権に不当な高評価を与え、ときに不当な低評価を与えることになります。
しかしながら、青木氏の誤謬のほぼすべては、安倍政権に不当な低評価を与えるものと言えます。
この事実から帰納的に考えれば、青木氏は安倍政権を公平にチェックしているのではなく、“ある種”、安倍政権を打倒する目的で詭弁(意図的な誤謬)を使っている可能性が高いと言えます。
このようなポジショントークは、明らかにジャーナリズムでなくメディアを利用した政治運動です。いずれにしても、詭弁を使って意見の異なる相手を貶めるポジショントークは、邪悪な力を使って人を呪う黒魔術のようなものです。
個人ブログ「マスメディア報道のメソドロジー」にて、論理学や心理学の定義に基づいた、メディアの報道・政治家の議論における論理的誤謬などの問題点を指摘。「ひるおび」「報道ステーション」「NEWS23」「サンデーモーニング」などの具体的な放送内容や議員の答弁、記者の発言などを例示しての論理的な分析が話題を呼んでいる。記事の一部を言論プラットフォーム「アゴラ」にも転載中。