自衛隊は有事の際、すばやく行動できなくてはいけません。そのとき、動線に物があると邪魔ですから、部屋の動線には物は一切置きませんでした。
災害が起きた時、すばやく行動しなくてはいけないのは一般の人も同じ。玄関、窓、階段など、避難経路には家具、観葉植物は一切置かないようにしましょう。
とくに気にしてほしいのがベッドの周辺です。災害が起きた時、いる可能性が高いのがリビングか寝室。起きている時は、多少動線に物があっても避けられますが、寝ぼけている時は危険です。教官からは、部屋のベッドの周りにはなにも置くなと言われていました。
動線を確保するために、物は基本的に外に出さず、収納するのがベターです。駐屯していた時は、動線を妨げないようベッドの下に収納ボックスを置いていました。
教官からは「収納スペースは“つくれ”」とよく言われました
たとえばソファーであれば、脚付きで下に空間ができるタイプのものにして、そこに収納ボックスをしまう、テレビ台の下にちょっとしたスペースがあれば、収納ボックスを買ってきてそこにしまう。
動線の妨げにならないところにちょっとした隙間、スペースがあったら、収納ボックスを活用してしまうといいでしょう。
■ルーティン化してしまう
いまでこそ自宅も整理が行き届いている私ですが、自衛隊に入るまでは、どちらかといえば整理整頓は得意ではありませんでした。実家の部屋の押し入れを開けると、物が溢れて崩れ落ちてくるなんてこともあったくらいです。
偏見かもしれませんが、基本的に自衛隊に入隊するのは大雑把な人間が多く、四人で共同生活を始めた時は、部屋は荒れ放題。ルームメイトたちの整理整頓の無頓着さに驚きました。
そんな隊員たちでも、次第に整理整頓ができるようになっていきました。なぜかといえば、掃除、片付けをルーティン化するからです。
教官からはこう言われていました。
「掃除、整理整頓は、毎日続けることが大事だ」
自衛隊はルーティンを非常に重んじます。何時に起きて、ベッドメイキングをして、何時までに支度をして……はじめは大変ですが、ルーティン化してしまえば、意識せず、息をするようにこなせるようになる。
掃除、整理整頓も同じです。着替える時、ついでにハンガーの間隔、服の色を揃える。物を取ったついでに面を揃える。
すると、いつのまにか整理整頓しているという感覚がなくなり、常に整っているという状態になるのです。だから駐屯地の営内はいつも清潔でした。
そして以上のようなことを実践するためにいちばん大事なのは、物を減らすこと。
お掃除レンジャーでは個人宅の掃除、片付けも承っていますが、散らかっている人に共通しているのは物が多いことです。
物が多い人はみな、「使う」 「使わない」の判断をする時、ほとんどを「使う」のほうにジャッジをしてしまっています。
片付けられなかった私だからこそ自信を持って言えますが、日常生活において、必要な物はそれほど多くありません。ほとんどの物はなくても困らないのです。
有事の際、「決断力」がその後を左右します。大災害が起きて、すぐに大事なものを持って避難しなくてはいけない時、物が多いと本当に大事な物をピックアップできなくなります。
年末年始の大掃除では、多少、思い入れがあったとしても、「一年以上使っていない物は思い切って捨てる」と基準を設けて、取捨選択をしてほしいと思います。
自分ではどうしても難しいという人は、先述したように、誰かに新鮮な目で「使う」 「使わない」のジャッジをしてもらうといいでしょう。