このリスクは川勝前知事が創ったものであり、プロジェクトのリスクというよりは政治家のリスクの問題です。一人の無責任な政治家が合理的な工学的根拠なしに工事をストップし、国民生活に大きな損害を与えたのです。
藻谷浩介氏:いろいろな論点があり、懸念もその通りで、特に南アルプスを貫くルートにするという決定ですね。もっと北の諏訪地域を回るという意見もあったのですが、当時の葛西敬之、強烈にこれを進めたJR東海名誉会長が、安倍さんとの当時の仲もあり押し切ったわけです。結果的にこれが悪く出て、建設費が高くなり、南アルプスのトンネルは非常に造り難い。
JR東海によるリニアのルートの選定は、プロジェクトマネジメントによる経済合理性に基づくものであり、国の交通政策審議会による客観的な審査を受けています。これを葛西氏や安倍総理の思惑でルートを決定したかのような藻谷氏の言葉には強い悪意を感じます。
南アルプスルートは、東京-名古屋間の最短距離を結んでおり、多くがトンネルで構成されているために、利権も発生しません。他のルートと比べて建設コストが低く、費用効果分析も最も高いものでした。建設費が高くなったのは、先述したように、異様なまでに不合理な政治要因です。
また、土かぶりが1400mある南アルプストンネルの建設に高度な技術力が必要なのはその通りですが、世界最高のトンネル施工技術を持つ日本の建設業界にとって、このトンネルの建設は必ずしも困難なものではありません。
日本のゼネコンは、スイスアルプスを貫いた長大ベーストンネルであるゴッタルドトンネルやレッチュベルク・トンネル、あるいはマレーシアの中央山地を貫いた長大導水トンネルであるパハン・セランゴールトンネル、チリのエルテニエンテ鉱山など、高地圧下の掘削工事の事例研究はもとより、東京電力神流川発電所・葛野川発電所や放射性廃棄物地層処分の地下実験施設など、大深度の掘削工事も経験済みです。
実際、多地点の建設工事においても大きな技術的問題は発生していません。リニアのトンネルの施工は、完全に体系化された山岳トンネル掘削工法(NATM)によって行われているのです。
通常のケースと異なるのは吹付けコンクリートの厚さとロックボルトの長さ・密度といった施工のスペックであり、山はね対策や湧水対策も通常の切羽前方探査によって行うことができます。
素人が聞きかじりでコメントするのは有害でしかありません。
問題の明白な論点を見失って、あたかも事業者側に問題があるかのように報じる『サンデーモーニング』には呆れるばかりです。

