大塚良平氏:元々、存立危機事態を十分ご存知だったと思いますけれども、今一度安全保障問題についての取り組み方について認識を徹底していただく必要があると思いますね。
それはどういうことかというと、安全保障問題の取り組みは、極めて現実性を要求されますから、例えば、存立危機事態の定義とか考え方について、あまり具体的・限定的に言及することは、結果として、本当に何かが起きた時に、こちら側の対処が非常にしにくくなる状況を生みだす可能性がありますから、是非そこの認識を徹底していただきたい。その部分が足りなかったかもしれないなと思います。
まったくもって大塚氏のおっしゃる通りであり、岡田議員が存立危機事態の定義とか考え方について明確にするよう高市氏に要求したことはあまりにも現実離れしています。
立憲民主党・岡田克也議員(7日衆議院予算委員会):我が国の存立が脅かされるかどうか、国民の生命・自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるかどうか、その判断の問題ですね。
それを、いろんな要素を勘案して考えなければいけないという総理の答弁では条文としての意味がないんじゃないか。もっと明確でなければ、結局どれだけのこともできてしまうことになりかねない。(中略)
武力の行使をすることについて、あまりにも大きな裁量の余地を政府に与えている。
【ゲーム理論 game theory】の観点からいえば、国家安全保障は、相手がどこまでなら戦闘行動に出ないかといった相手の利得ルールに関する情報を知らずに行う【不完備情報ゲーム game with incomplete information】の典型です。
この場合に、自分のゲームのルールを公開することは相手につけ入るスキを与えます。もし、存立危機事態の定義を明確にすれば、日本はムダに行動の自由を放棄することになります。
相手は、この情報の非対称性を利用して、存立危機事態の一歩手前まで行動したり、存立危機事態を一歩超えて行動したりするなどして、ゲームをコントロールすることが可能になります。
また、相手は、この優位を放棄しないので、平和的解決の道は遠のきます。国家安全保障において、自らの出方を【コミットメント commitment】として公開することは、相手に対する脅し以外には使えないのです。
大塚良平氏:実際、存立危機事態の議論は、10年前の安保国会で随分、私も含めてやりましたけれども、台湾有事とか、ホルムズ海峡の問題は、当時の安倍総理も関係閣僚も基本的には「仮定の質問には答えない」とこれを徹底していましたので、そこは今一度しっかり踏まえていただきたいと思います。
答弁の中で、高市さんが「例えば」と言いましたけれども、「例えば」は安全保障問題ではありえないです。その現実性とともに国際情勢の変化や軍事技術の進歩を考えると柔軟性も要求されるので、その観点でもあまり限定的・具体的に言及するべきではない。


