中国の人権意識や倫理観は今現在の国際社会(先進国)の通念からすれば大幅に遅れたものであり、到底許されるものではない。
だが、先進国と言われる国々が150年前には平気でやっていた植民地支配などのあれこれを考えれば、中国のやり口はハイテクにはなっているもののそれと変わらない面もある。日本に跳ね返ってくる問題もあるだろう。
国家が近代化する過程で持ってしまう暴力性なのか、過程を過ぎても中国が持ち続けるであろう「西洋価値観否定」による統治方法なのかは、これから先の中国を見続けることでしか判断できない。
また、ラビア氏が言うように自分自身が生きていることがウイグル人がいたことの証明になるのであれば、中国当局が何をしようとも、ウイグル人が生きた痕跡は消すことはできない。ウイグルの「今」を切り取った本書の中に、「今」のウイグル人たちの描写が書き残されたことにも、同じ意味があるのではないか。
後にも先にも恐らくないであろう唯一無二の新彊の現地ルポルタージュ。読まない手はない。

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。