【読書亡羊】ウイグルに潜入したら見えてきた「中国の本当の姿」とは  西谷格『一九八四+四〇――ウイグル潜行』(小学館)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


中国の人権意識や倫理観は今現在の国際社会(先進国)の通念からすれば大幅に遅れたものであり、到底許されるものではない。

だが、先進国と言われる国々が150年前には平気でやっていた植民地支配などのあれこれを考えれば、中国のやり口はハイテクにはなっているもののそれと変わらない面もある。日本に跳ね返ってくる問題もあるだろう。

国家が近代化する過程で持ってしまう暴力性なのか、過程を過ぎても中国が持ち続けるであろう「西洋価値観否定」による統治方法なのかは、これから先の中国を見続けることでしか判断できない。

また、ラビア氏が言うように自分自身が生きていることがウイグル人がいたことの証明になるのであれば、中国当局が何をしようとも、ウイグル人が生きた痕跡は消すことはできない。ウイグルの「今」を切り取った本書の中に、「今」のウイグル人たちの描写が書き残されたことにも、同じ意味があるのではないか。

後にも先にも恐らくないであろう唯一無二の新彊の現地ルポルタージュ。読まない手はない。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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