【読書亡羊】ウイグルに潜入したら見えてきた「中国の本当の姿」とは  西谷格『一九八四+四〇――ウイグル潜行』(小学館)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「最高刑は無期懲役だ」

新彊地区からカザフスタンへ出国しようとした西谷氏は、何と当局に拘束されることになってしまう。新彊地区内でスマホで撮影した危ない写真は削除していたが、フォルダ内に残っていた過去の写真が問題視されたのである。

写真には、ウイグル人の中でも独立を目指す人たちが掲げる「東トルキスタン共和国」の旗が写っていた。

「お前には『国家安全危害罪』の疑いがある。ああいう写真を所持することは中国では許されておらず、完全に違法だ。最高刑は無期懲役となる」

そう脅す小太りの警官を前に思わずあっけにとられる西谷氏。

こうして書籍が刊行されているのだから、西谷氏が無事だったことはわかっている。だが拘束中のくだりを読んでいる時には、こちらまで冷や汗と脂汗が出てくるような気分になった。西谷氏が、万事休すと言うほかない状況に追い込まれたためだ。

いったい、この状態からどうやって助かることができるのか。拷問器具のタイガーチェアが置かれているのを横目に、西谷氏が取り調べを受けながら次第に現実感を失っていくのも無理はないことだった。

ここはぜひ書籍を実際にお読みいただきたいが、結果的には西谷氏の「正直さ」が身を助けたということになるのだろう。

西谷氏は、人権活動家や政治団体による「ウイグル人強制収容所」の告発が事実に近いものなのかどうか、ともかくウイグルの実際の様子を知りたいという動機から新疆へ向かった。さらにはおどろおどろしいウイグルに関する証言をそのまま横滑りさせて、普段は人権にはほとんど興味がないのに中国共産党批判を展開するためだけに使っている人たちに対する疑念も抱いていた。

「実際どうなのか、現地に行って見てみたい」と取った行動が思わぬ事態を招いたわけだが、現実に「(訓練所ならぬ)強制収容所」に収容されてひどい目に遭い、カザフスタンに亡命した人の話も聞いている。

それによって〈結果的には無力感が募るばかりだった〉という一方で、〈ウイグル人はそれでもとにかく生きていた〉とも書いている。

「いやいや、中国はやっぱり悪でしかないだろう」とは思うのだが、ではどうすればいいかという答えはそう簡単には見つからない。

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読書亡羊 書評 梶原麻衣子

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