【読書亡羊】闇に紛れるその姿を見たことがあるか  増田隆一『ハクビシンの不思議』(東京大学出版会)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


人間との共存を願う

ハクビシンの不思議: どこから来て、どこへ行くのか

外で見かける分には、また写真で見る分にはなかなかかわいいハクビシンだが、「獣害」を引き起こす側面もある。溜め糞場(野外トイレ)を作る習性を持ち、住宅の隙間に入り込んで住み着くことから、これが自宅敷地内に及べば迷惑だと感じる人も出てくるだろう。

すでに東京都北区では〈建物の天井裏等に入り込まれている、又は敷地内の果実等への食害、若しくは敷地や屋上・ベランダ等への糞尿被害がある〉場合などには、区が箱わなを設置するなどの被害対策を行う旨が告知されている。

勝手に人間に連れられてきただけなのに、増えたら迷惑者扱いのうえ捕獲、とはハクビシンこそいい迷惑だと思うだろうが、北区では今年の4月から9月までの間に21匹が捕獲されている(ちなみに北区ではハクビシンと同様にアライグマについても捕獲を行っている)。

山里へ降りてくる熊、アーバンベアの脅威は今年も大々的に報じられていた。確かに農作物への被害、クマの場合は襲われる危険があるため、人間との共存は難しいだろう。

ハクビシンにしても、第五章〈ハクビシンと人間社会〉に指摘があるように、他のあらゆる野生動物と同様、人間との接触機会が増えれば未知の感染症を引き起こしかねない危険性がある。

それだけに、「かわいい」だけでは済まないハクビシンなのだが、何とか人類といい距離を保ってもらって、共存できる道を探りたいものである。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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