石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


旧岸田派はまとまって石破氏へ投票か

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1回目の議員票は、小泉氏が75票を獲得し1位だった。これは党所属議員の、「党の刷新を一気に行い、総選挙で国民に問うためには小泉氏が最適だ」との考えからである。安倍政権、菅政権の規制改革による経済活性化を継承し、再び実行することへの期待もあった。しかし、高市氏、石破氏との党員票の差を逆転するまでには至らなかった。

そして、決選投票の議員票の動向であるが、石破氏が一気に票を伸ばして逆転した。直前までどちらに投票するか決めていなかった議員で、2人の決選投票前の演説で判断したという方もいた。石破氏は心に訴える内容が強い演説で、大きな拍手が起きた。一方、高市氏は理知的な内容であったが、拍手は石破氏より少なかった。

「〇〇派は決選投票でまとまって高市氏へ投票」など、裏付けのない大手メディアの情報や怪情報も前日夜から駆け巡った。これらが議員票の動向にどれだけ影響を及ぼしたかは現時点ではわからないが、後にわかってくると思うので改めてお伝えしたい。

高市氏に対しては議員からこういう声も聞かれた。「リーフレットの送付はルール違反でなくてもグレーだ」、「全国での大規模講演会は岸田総理に弓を引くものだった」という声である。特に全国での講演会は、岸田文雄総理が総裁選への態度を明らかにしていない段階でも各地で開催されたことから、旧岸田派の議員などから「岸田総理への挑戦状だ」と受け取られていた。

私はこの意見に必ずしも賛同するものではないが、決選投票で旧岸田派はまとまって石破氏へ投票したとみられる。これらがなければ、高市氏が勝利していたのではないかという見方がある。

なお、「リーフレット送付が党員票の上積みに繋がった」とのメディアにおける言説は、私は事実でないと見ている。高市氏の党員票得票1位は、政治姿勢が評価されたものであると考える。

総理として何を成し遂げていくのか

石破茂新総裁は総理として何を成し遂げていくのか。まず、何よりも皇統の安定のため、菅義偉政権からの政府の既定路線である旧宮家男系男子の方々の皇籍復帰を実現しなくてはならない。さらに、国家国民のための憲法改正の実現だ。

石破新総裁は国会発議を明言しているが、自衛隊明記よりも、9条2項を削除し自衛隊を「国防軍」に改め憲法に明記するべきと述べており、9条の根本改正案に着手することになるかもしれない。米国に自衛隊の訓練基地の創設、日米地位協定の改定にも言及しており、相当の実行力が必要となる。

また、石破新総裁は先月、総裁選前に台湾を訪問し頼清徳総統と会談している。中国の覇権侵略主義への対抗において、アジア版NATOの創設を提唱している。どこまでやれるか疑問符を投げかける方もいるが、いずれにせよ国を守る政策を実行していかなくてはならない。

拉致問題については新たなアプローチをお考えのようだが、速やかに拉致された方々を奪還することが必須である。防災省創設については、私も1回目の選挙から防災復興省の創設を主張しており、国家としての防災力と復興力の強化のため大いに賛同するし実現しなくてはならない。

そして、経済政策であるが、石破新総裁は会見で、物価上昇を上回る賃金上昇を実現する考えを強く示した。石破新総裁誕生直後から円高と株安が進んでおり、経済と賃金を上昇させるための具体的なプランを早期に明示することが重要だ。

解散総選挙について石破新総裁は、「なるべく早く」との考えを示した。最も早ければ10月15日公示、27日投開票。もしくは10月29日公示、11月10日投開票が有力視される。しっかりと、党の再生の姿を国民に問わなくてはならない。

党改革、未来に向けた国防政策、経済政策、新総裁のもと国民に強く訴え、再び自民党に託していただき、我が国の発展に繋げていかなくてはならない。

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