太陽光発電単価のまやかし
また、再エネには電力需給システムに与える社会的恩恵も殆どありません。現在最も普及している再エネである太陽光発電は電力需給システムにおいて「いいとこどり」を行っているに過ぎません。
例えば、燦燦と太陽が輝いて冷房が必要となる暑い夏に太陽光発電は電力(kW)を高める強力な味方になってくれます。まさに太陽光発電は、国民が再エネ賦課金を支払って特別に雇っている傭兵の役割を担っています。
しかしながら、急に雨が襲ってきたら、その傭兵は一瞬で消え去り、すべての戦いを背後に控えている既存の常備軍である石油火力発電・LNG火力発電・水力発電に委ねてしまうのです。
この場合に火力発電と水力発電でそれまで太陽光発電が担っていた電力(kW)を確保できるのであれば何も問題はありません。実際、太陽光発電が供給する電力(kW)が少なかった過去には代替電力(kW)の確保に困難はありませんでした。しかしながら、いまや太陽光発電の存在は簡単にバックアップできないほど巨大になりました。
加えて、平時に太陽光発電に立場を奪われて結果を残せない老兵の石油火力発電は、2016年に始まった電力自由化の経済原理に従って、どんどん退役させられています。このため、天候不順時に需要の電力(kW)を確保できないリスクが右肩上がりに高まっているのです。当然電気料金も高騰します。
それでも日本にはすぐにでも参戦可能な原子力発電という強力な常備軍が控えています。しかしながら、一部のデマゴーグに扇動された群衆の不評を買って、危機においても参戦できない状況にあります。まさにこれが現在の日本における電力逼迫のメカニズムなのです。
太陽光発電は、無尽蔵に存在する太陽エネルギーを利用するものであり、燃料費を必要としません。一見すると安価なエネルギーに見えますが、高価な資本費(建設費、固定資産税、設備廃棄費用等)を必要とするため、2030年に価格が低下したとしてもその発電単価(円/kWh)は石炭火力・LNG火力・原子力と同等です。
しかもその発電単価にはまやかしがあります。それは、再エネを電力需給システムに接続する際に次のようなコストが必要となるからです(経産省コスト検証WG)。
①プロファイルコスト:再エネの発電量が上下することに伴う、既存火力等の運用変更と発電効率低下に伴うコスト
②バランシングコスト:再エネの発電量が予測不可能なことに伴う、既存火力等の発電量の調整や予備力の確保に伴うコスト
③系統・接続コスト:再エネの適地と需要地がズレることに伴う基幹系統整備費用や基幹送電網につなぐコスト
太陽光・風力といった変動性再生可能エネルギーは、安価で安定したベースロード電源の存在に加えて、電力(kW)の出力調整能力がある電源のバックアップがあってはじめて電源として成立するのです。
電力(kW)の恒常的な確保には、再エネの存在は脆弱であり、ミドルロード電源のバックアップが必要不可欠です。主力電源化するには、長期蓄電システムを含めた大容量の高価な蓄電システムがセキュリティ上必要不可欠であることは疑いの余地もありません。
浜田敬子氏:気候変動による災害は、普通の生活をしている時の経済格差とか、特に経済的弱者の人たちの深刻な状況をより浮き彫りにする。日本でもエネルギー価格の高騰とか気候変動によって食料品の値段が上がることによって一番被害を受けているのは、シングルマザーの家庭で、ある調査によっては「夏休みがない方が」という回答も多くなっている。