正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡――なぜ耳を疑う医療事故が相次いで起きているのか。その実態から浮かびあがってきた驚くべき杜撰さと隠蔽体質。ジャーナリストの長谷川学氏が執念の取材で事件の真相を暴く。いま「白い巨塔」で何が起きているのか。


結果的に事故隠しに手を貸した院内事故調査委員会

A氏が橋本教授と会う1カ月前の2021年2月、A氏の粘り強い要請を受け、日赤本社がようやく第一日赤に対し、くも膜下出血の女性患者が絶対禁忌処置で死亡した2020年6月の事故に関する院内事故調査委員会を立ち上げるように指示した。A氏は日赤本社に事故調を立ち上げることを求めたが、日赤本社は第一日赤に丸投げした。  

日赤本社の指示を受け、第一日赤院長は院内事故調委員を5人選んだ。ところが脳神経外科の医療事故調査にもかかわらず、脳神経外科医は京大脳神経外科教授の部下の准教授ただ1人だった。事故を起こした当事者の病院の院長が、委員を選んで事故かどうかを調査させるのだから結果は知れている。院長が選んだ委員による“お手盛り”の事故調は2021年9月、「明らかな誤りがあったと言えない」との報告書をまとめ、結果的に第一日赤の医療事故隠しに手を貸した。報告書を中心的にまとめたのは、唯一の脳神経外科医だった京大助教授だったと見られる。  

この報告書に基づき、第一日赤の池田栄人院長(当時)は「Aがありもしない医療事故を声高に訴えた」とA氏を非難し、懲戒処分と配置転換を検討していることを通告。これに打ちのめされたA氏は、退職を決意した。  

報告書が出たあと、A氏は准教授の上司の京大教授と面会し、「誤った報告書のせいで迷惑している」と言った。録音音声によれば、このとき教授は「訴訟になったら学会として責任を持てないからね」と答えている。  

教授は2021年10月から23年10月まで日本脳神経外科学会の理事長を務めており、この時点で学会理事長に就任していた。  

一連の経緯は、日本脳神経外科学会に自浄能力がないことを示している。日本脳神経外科学会は第一日赤を処分することで、学会に火の粉が及ぶのを防いだのではないか。

ボールペンに葬儀社のネームが入っていた

A氏が京都市に提出した資料には12人が医療事故で死亡したと書かれており、第一日赤の一連の医療事故はまだ何も解明されていないも同然である。一方、遺族による新たな真相解明の取り組みも始まっている。
 
第一日赤は「医療安全の取り組み」として「人道と奉仕の赤十字精神に基づき、患者様にとって安心できる最善の医療を行います」と謳い、医療安全推進室を設置している。推進室長は第一日赤副院長の兼務だ。  

その副院長と推進室メンバーが今年4月、2021年9月30日に第一日赤第二脳神経外科入院中に死亡した山下晃さん(享年77・仮名)の遺族と面談した。山下さんは、A氏が京都市に「死亡12人」と報告したうちの1人。  

副院長は「人間を救うのは、人間だ」と印刷した自分の名刺を遺族に渡した。第一日赤側はボールペンを用意して、遺族の席の前に置いた。そのボールペンには、あろうことか葬儀社のネームが入っていた。遺族は推進室メンバーの鈍感さと配慮のなさに呆れた。

遺族は、すでに京都地裁にカルテなどの証拠保全を申し立て、第一日赤から資料一式を入手していた。そのことを知った推進室が遺族を呼び出したのだ。推進室は「医療事故ではない」と遺族に伝え、その1カ月後、「院内調査の結果、問題はないと判断した」と伝えた。  

私は遺族からカルテなどを預かり、告発した脳神経外科専門医のA氏ら複数の医師に分析してもらったが、問題が山積していた。

以下、第一日赤側の対応の問題点を列挙する。

搬送から3時間も主治医は診察しなかった

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