目を疑う凄まじい手術映像
医療事故を起こし、京都市の行政指導を受けた京都第一赤十字病院(京都市・大辻英吾院長、以下「第一日赤」)と、その上部機関である日本赤十字社(以下「日赤本社」)が、自らの医療ミスで傷つけた患者と法廷で争っている。
お上に弱く、庶民にはどこまでも高圧的な大病院の体質をよく表している。
この裁判は、第一日赤第二脳神経外科(当時、現在は脳神経外科)で脳腫瘍の摘出手術を受けた女性患者の田中恵子さん(71・仮名)が、4年前に第一日赤で受けた手術によって誤って正常脳を切除され、右半身にしびれなどの症状が出たとして、日赤本社と当時の第二脳神経外科部長に損害賠償を求めたもの。
恵子さんが京都地裁を通じて第一日赤から入手したカルテや手術ビデオなどの証拠資料と、恵子さんや家族の証言によると、第一日赤側は開頭すべき位置を誤り、腫瘍がないところを開頭した。さらに腫瘍ではない脳実質を腫瘍と思い込んで摘出しており、二重のミスを犯した。
その後の対応も悪質だ。第一日赤側は、手術が終わるのを待っていた恵子さんの家族にミスを隠し、「他に怪しいもの(腫瘍)が見つかった」と嘘をついて手術を再開。ようやく本来の腫瘍を摘出した。
第一日赤側が正常部位に何度もメスを入れて引っ掻き回す様子は、手術ビデオにすべて記録されている。私はそのビデオを見たが、目を疑うような凄まじい映像だった。一部を再現する。
「腫瘍やもんな? 腫瘍おるもんな」
「はい、これ腫瘍出ますよ」(と言って正常脳を摘出)
「こういうところわかる? これ腫瘍でしょ、外側から回るしかないので」(と言いながら、切除を諦めて別の個所に移る)
「これ、腫瘍かね。これ腫瘍やね」(と言いながら、正常脳を切除)
「これ何やろ、これ腫瘍やな。これ吸ったら終わりやな。(吸引管で)吸いますね、これ。あ、これ取ろうか。はい、腫瘍。これ、静脈がここにおるねんな」
「一応、削れるところは削って、まあ腫瘍っぽいとこはもう、ないねんけど、ひょっとしたらこの奥におるかもしれんけど」
「もうあと、取ったら血が出るかなっていう感じになっているんで、まあまあ、ええかな。予定より、ようけ取っていると思う」(と、止血を始める)
繰り返すが、第一日赤側が腫瘍と思い込んでメスで引っ搔き回しているのはすべて正常脳である。