【読書亡羊】トランプ陣営も「これ」で献金を巻き上げた⁉ ハリー・ブリヌル著『ダークパターン』(BNN)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


事業者とのイタチごっこは続く

ブリヌルはこうしたダークパターンと「ナッジ」についても触れている。ナッジとは、行動経済学の知見に基づくものであり、人はちょっとしたきっかけで、あまり深く意識せず狙い通りの善行を働くように仕向けられる、というものだ。

有名なのは男性用の小便器にハエや的のイラストを描いておくと、男性たちがそれをめがけて用を足すようになり、床の汚れが減る、という事例だ。

しかし、「ちょっとした促しによって人を思う方向へ誘導できる」ということは、必ずしも善とは言えない方向へも誘導することが可能になる。

そんなことは誰でも思いつくわけで、当然ながらウェブ上のサービスでは「悪いナッジ=スラッジ」が横行することになってしまった。人間心理を悪用して、サービス提供者が得し、自身が存する方向へユーザーを動かしてしまう。

本書はダークパターンのありとあらゆるパターンを網羅し、法的に対処できるもの、ユーザーが気を付けるべきもの、サイト構築者が避けるべきものを挙げて警鐘を鳴らしている。

だが、今後は生成AIによるサイト構築も増えることから、いくら規制しても抜け穴をすり抜けるイタチごっこになることが予想される。

何より問題なのは、ダークパターンのカモになりやすいのは視覚に障害がある者、騙しのような文章を読解し回避する能力がない者、時間がなく何ページも遷移が続く解約手続きをやり遂げることができない者――つまりあらゆる意味で何らかの弱点を抱えている人、ということになる。子供や老人はもちろん、絶好のカモだ。

こうした手法はウェブで盛んだが、人を動かすためのあらゆる局面で悪用できてしまう。ユーザーとしては漫然とサービスに乗っかるのではなく、自分の時間や財産を売り渡すことにならないか、確認しながら使うしかない。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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書評 読書亡羊 梶原麻衣子

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