朝日新聞は批判の大展開
愛知県名古屋市東区の愛知芸術文化センターで開かれていた3年に1度の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」のうち、企画展「表現の不自由展・その後」がスタート3日目で中止された。
この企画展は、日本各地の公的な美術館などから「展示には不適切」と判断され、撤去されるなどした20数点を集めて展示していた。
いわゆる従軍慰安婦を表現し、ソウルの日本大使館前に設置され、反日の象徴となったものと同じ型から作られた少女像や、昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品などだ。少女像は韓国の彫刻家夫妻が制作し、ソウルの他、世界各地にあり、日本を貶めるものとなっている。
すでに初日から、実行委員会には抗議の電話などが殺到していた。実行委の会長でもある愛知県の大村秀章知事は3日、記者会見し、「ガソリン携行缶を持って(会場の)美術館に行く」と、京都アニメーション放火殺人事件を連想させるファクスが事務局に届いたことなどを明らかにし、企画展の中止を発表した。中止後も抗議は続いており、4日までで約3,300件に上ったという。
朝日新聞は4日、主要紙のなかで唯一、朝刊一面のトップで扱い、見出しには「テロ予告・脅迫相次ぐ」とあった。一面コラムの天声人語でも取り上げ、二面、社会面でもこの問題を扱い、批判的な論調を大展開した。
中止翌日には、全国各地から会場に集まった約30人が〈見たかったのに!! 暴力で『表現の自由』を封殺するな!!〉という横断幕を掲げて抗議した。
河村たかし名古屋市長は2日に会場を視察し、「表現の自由という領域ではなく、日本国民の心を踏みにじる行為であり許されない」などとする抗議文を大村知事に提出し、展示の中止を求めていた。
これに対し、5日午前、大村知事は「(市長の)一連の発言は憲法違反の疑いがきわめて濃厚だ」と定例会見で語った。朝日新聞によると、大村知事は河村市長に対し、「公権力を持つ立場の方が『この内容は良くて、この内容はダメ』と言うのは、憲法21条が禁止する『検閲』ととられてもしかたない」とした。
「日本人を蔑み、陥れる展示はふさわしくない」と表明した日本維新の会に対しても、「表現の自由を認めないのか、憲法21条を理解されていないのかと思わざるをえない」と批判した。
一方、河村市長は別の会見で、「表現の自由は憲法21条に書いてあるが、絶対的に何をやっても良いという自由じゃありません。表現の自由には一定の制約がある」と主張した。
さらに朝日新聞は、「中止招いた社会の病理」と題した6日の社説でこう書いた。
〈「表現の自由」が大きく傷つけられた。深刻な事態である〉
〈市長が独自の考えに基づいて作品の是非を判断し、圧力を加える。それは権力の乱用に他ならない。憲法が表現の自由を保障している趣旨を理解しない行いで、到底正当化できない〉