憲法は国民を守るためにある
佐藤さんは元教員で、「学校の先生もどうしたらいいか真剣に考えていたと思う。しかし、事前にどこに避難するか明確な定めがなかったため、どこに避難するか話し合っているうちに津波が来襲した」と話された。
事前に明確に避難場所を定めることなどの事前防災は欠かせないことであり、それをもとに迅速に全力で避難することが津波から命を救う。さらに、避難場所も危険と判断すれば、もっと海や川から遠くへ避難することが重要であり、命を守るためのベストを尽くすことが必要である。
私は、東日本大震災の津波で救えなかった命への後悔から、その後、大学院で津波避難についての修士論文をまとめた。津波や大規模災害避難の研究者でもあり、国会議員に立候補したのも震災復興を成し遂げるという意志からであった。
その中で、災害から命を守るために実現しなくてはならないのが憲法改正である。現行憲法には他国の憲法で定められているような緊急事態条項がなく、大災害時に行うことができる国民の私権制限は極めて限定的である。
例えば、大災害時に発生する多くの避難者を屋根付きの球場や体育館に避難させたいと、政府が所有者に対し避難者収容や借り上げを要請したとしても、拒否された場合は強制的に借り上げることはできない。
こうしたことを含め、災害などの緊急時に対応できる憲法に現行憲法はなっていない。すなわち、救える命も憲法の不備で救えない場合が出るかもしれないのである。憲法を守ることで命が失われてしまうのであれば本末転倒である。憲法は国民を守るためにある。
未曾有の大災害は、想定をも超える。憲法に緊急事態条項を定め、大災害時も国民の命を守れるようにしなくてはならない。私はそのための行動を続け、必ず実現する。
著者略歴
1974年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業(日本外交史)。1997年、アナウンサーとしてNHKへ入局。新潟局、帯広放送局、大阪放送局を経て、2009年7月より仙台放送局に勤務。東日本大震災の報道や取材に携わる。2013年、第23回参議院議員選挙において、宮城県選挙区で初当選。2019年、全国比例区で再選。