虎視眈々と侵略のタイミングを計る中国
このように偽情報の拡散は巧妙に行われ、選挙に影響を及ぼす偽情報が一気に広がる危険性があることから、台湾の呉釗燮・外交部長(外相)は総統選を4日後に控えた今月9日、「中国が軍事的脅威、政治的威嚇、経済的利益による誘惑、サイバー攻撃、フェイクニュース、認知戦等のハイブリッド戦略で台湾の世論を操作している」と海外メディアを集めた記者会見で明言した。
さらに、「中国は台湾の選挙介入に成功したならば、この経験をもってその他の民主国家の選挙にも介入することになるだろう」と警告した。
なお、民進党の副総統候補の蕭美琴氏に対し、中国は「台湾独立分子」だとレッテルを貼り、入国を禁止するなどの制裁を科しているが、今回、総統候補の頼清徳氏とともに当選を果たした。
今回の選挙結果を受け、台湾統一を目論む中国の習近平政権がどう出るかであるが、極めて緊迫した状況になることを覚悟しなくてはならない。頼清徳氏の総統就任は5月になるが、その前後で中国が台湾においてテロを起こすことも考えられる。
テロを各地で起こしたうえで、反政府デモを起こし、「頼清徳新総統は台湾を統治できていない」という世論工作を行い、中国が“中国国内の治安維持”の名目で台湾を侵略するというものである。平和的な統一などあり得ないことから、民進党政権の継続確定で一気に仕掛けてくることも想定しなくてはならない。
今回の総統選では、中国の世論工作については大々的に報道されたことによって台湾の人たちへの中国への警戒感が高まったことから、中国の世論工作は逆効果であったと言える。しかし、中国は今回の工作結果を分析し、必ず次に繋げてくる。
台湾の政権転覆が中国の本当の狙いであるならば、今回の世論工作は序章でしかない。頼清徳氏が勝利したから安心であるということではなく、中国は虎視眈々と侵略のタイミングを計り、そのための工作を行う。日本においても「頼清徳新総統は台湾を統治できていない」との世論工作が巧妙に仕掛けられる可能性がある。
絶対に偽情報に迷わされず、台湾を守らなくてはならない。おかしな兆候があれば、皆様にもお伝えする。日台の友好関係をさらに強化し、中国の覇権主義に立ち向かい、中国による侵略を阻止していく。
著者略歴
1974年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業(日本外交史)。1997年、アナウンサーとしてNHKへ入局。新潟局、帯広放送局、大阪放送局を経て、2009年7月より仙台放送局に勤務。東日本大震災の報道や取材に携わる。2013年、第23回参議院議員選挙において、宮城県選挙区で初当選。2019年、全国比例区で再選。