外部電源の受電用の2台の変圧器の配管から絶縁用オイルが流出しましたが、別系統・別回線の送電線と変圧器を通して受電が継続しているので、オペレーションにはまったく問題はありません。また、外部電源は至便のために利用しているのであって、外部電源がすべて閉ざされたとしても、原発には複数のディーゼル発電機による非常用電源が確保されています。
また、仮に発電機を稼働していたとしても被害状況に変化はありません。稼働と被害とは無関係であるからです。津波も十分な高さの余裕をもって完全にブロックしています。このような状況において「ここが運転していたら」「ここで事故があったら」という仮言命題(もしAならばB)を設定するのは合理的ではありません。
この合理性を欠いた命題で「半島の先には近づくこともできない」という結論を導き、さらにこれを根拠にして「原発回帰のエネルギー政策はそれでいいのか」なる結論を導くことは【論理の飛躍 jumping to conclusions】以外の何物でもなく、災害の政治利用に他なりません。
青木氏の妄想は、原発の安全性を否定する根拠にはなりません。このような俗に言う「イチャモン」と呼ばれる暴論、すなわち事実に基づくことのないデマを公共の電波で流布することを許容することこそ、国のレジリエンスを低下させることに繋がります。
人々の不安をいたずらに煽って混乱させるという人道にもとる放送は、被災地の支援活動を無用に邪魔する迷惑行為です。『サンデーモーニング』は東日本大震災の経験から何も学んでいないと言えます。
なぜウイグルを無視するのか
さて、新春スペシャルの「壊れゆく時代 壁が分断する社会」では、イスラエル=パレスチナ問題を中心に国際的な争いを紹介する制作映像とスタジオトークで構成されていました。
テリトリーを分断する「壁」を問題視する内容でしたが、これをもってすべてを一般化する試みは完全に失敗しました。
関口宏氏:今日は「壁」ということを中心にしてきましたが、そのほかの壁もちょっとご紹介しておきたいと思います。
アナウンサー:パレスチナを封じ込めるイスラエルの壁だけではなく、世界には多くの壁が建てられています。ポーランドやフィンランドにはロシアとの国境沿いに新たに壁が造られました。そしてアメリカには移民に対する壁、そしてペルーには富裕層と貧困層の居住地区を隔てる壁、さらにインドとパキスタンの間にも領有権を争う地域に壁が造られて長年対立が続いているという状況です。
関口宏氏:壁があるということは断絶が起こっているということですが…
侵略国との国境沿いの壁や不法移民に対する壁は、主権国家の防衛のための正当な壁であり、パレスチナを封じ込めるイスラエルの壁と同一視するのは妥当とは言えません。むしろ「天井のない監獄」と呼ばれるガザ地区とよく類似しているのは、番組では、取り上げなかった新疆ウイグル自治区にある中国共産党によるウイグル人再教育収容所の壁です。
なぜ人権を振りかざす『サンデーモーニング』がこの人権蹂躙の強制収容所の存在を知っていて見事に無視するのか不思議でなりません。