【読書亡羊】「助平ジジイ」は誉め言葉!? ヨーロッパ王侯貴族のニックネーム  佐藤賢一『王の綽名』(日本経済新聞出版)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「ジャイアント馬場的な響き」とは!?

目次に並ぶ綽名に笑い、しかしそれに対応する王や貴族の名前を見ても、誰が誰やらさっぱり見分けがつかない、という(筆者のような!)人もいるだろう。しかし安心召されたい。

読めば強烈な個性や来歴から付けられた綽名と、本人の生涯が結びつくだけでなく、歴史的背景まで簡潔ながら行き届いた説明があり、「欧州中世・近世史」のトリビア本のように楽しく読めるはずだ。

例えば「『フリードリヒ・バルバロッサ』というドイツ語+イタリア語という名前と綽名の言語の組み合わせは、いわばリングネーム「ジャイアント馬場」的な響きである」、といった具合だ。分かりやすいうえに、実に面白い。

そこはさすが、「西洋歴史小説の名手」との呼び声の高い佐藤賢一氏の手になるところ。登場人物の何を紹介すればその人柄が伝わり、どういう背景のもとにそのようなことが起こったか、といった説明それ自体が面白く、「次の個性的な綽名の人物はどのような人なのだろうか」との興味が尽きない。 

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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