おもちゃは美術品扱いされにくいが映画やテレビで使われた小道具はどうだろう?
ゴジラを作ったのは東宝特撮美術の利光貞三さんだ。ウルトラマンを作ったのはデザインが彫刻家でもある成田亨さん、マスク造形をしたのが彫刻家の佐々木明さん。
『ウルトラマン』や前作の『ウルトラQ』に登場した怪獣を作ったのが画家の高山良策さん。高山さんは大映映画『大魔神』も作っている。ゴジラは東宝の美術さんだが、映画やテレビに登場したキャラクタープロップに芸術家がかかわっているかがわかると思う。
でも、利光さんが怪獣着ぐるみの元祖なので偉大な存在だ。
芸術家という点ではハリウッド映画界では『エイリアン』が有名で、H・R・ギーガー(スイスの画家)が劇中に登場する様々なものをデザインした。ギーガーが描いた絵の原画は数千万円という値段で美術品として取引されている。それにしても価値が高い。
前置きはこれくらいにしておこう。日本ではプロップを美術品として見る人があまりにも少ない。そんな事もあり、先日、日本アート評価保存協会で『映画界の遺産』というテーマで講演をしてきた。
日本アート評価保存協会というのは美術品の公正・適正な価格を提示し市場での価格を維持したり、美術品の地位を高めていく事業を進めている。会員の多くは美術館の館長や元館長なので、鑑定などにも長けている。
「ゴミをください」
今回この会の講師として呼んでくれたのは、評価委員の岩堀恭一さん。
岩堀さんはかつて『開運!なんでも鑑定団』で鑑定士をしていた事もあり、マリリン・モンローさんが『七年目の浮気』で来ていた有名なドレスに2億円の評価価格を付けた人だ。
ちなみにこのドレスは『スター・ウォーズ』でレイア姫を演じたキャリー・フィシャーさんのお母さんデビー・レイノルズさんが持っていたものだ。この有名なドレス、後にハリウッドのオークションに出品され約6億円になったようだ。
日本の映画&テレビ番組のプロップ価値はどうなのか?
80年代初め円谷プロに行った時、怪獣倉庫の前に大量のゴミの山があった。当時の円谷社長に「ゴミを下さい」と直談判すると社長はビックリした顔で「ゴミだよ!!」と言われたけど「ゴミを下さい」と引き下がらないでいると「ゴミを持って行ってくれるならありがたい。でも、ゴミだよ」と何度もゴミを連呼し承諾してくれた。
その時貰ったゴミが後に六本木ヒルズにある森アーツセンターギャラリーに展示され全国の美術館で展示される事になるのだからね。
講演会では、映画プロップが美術品だという事を熱弁した。美術品というのは、美術館に飾られないと美術品にならない。なので、映画&テレビプロップは美術品なのだ。
コロナ禍になってからハリウッドでの映画プロップオークションも値段が凄い事になっている。今までは何か一つくらい落札できる値段だったが、今ではスタート値から手が出せない状態になってしまった。
どうもプロップを投資目的で買っている人も多いようだ。講演に持って行った『ジュラシック・パーク』で使われた杖も先日のハリウッドでのオークションで600万円以上したのだから、今だったら絶対に手に入れる事は出来なかっただろう。(ハリウッド映画プロップは予算があるので同じ物をいくつか用意する)
プロップは価値があり美術品だという事が有識者の人達にも伝わったようなので、本当に良い機会をもらった。
今後もこういった講演が出来れば嬉しい。そうやって自分のコレクションの価値を高めたいと思う。
講演に招いてくれた岩堀さんとパチリ。
昭和45年8月22日生まれ。たけし軍団初の2世タレントとして、91年デビュー。趣味の特撮キャラ収集では、30年以上前から専門誌やイベントで資料提供している。主催のお笑いライブは、個人主催では最長記録である。