LGBT法案、私が退席した理由|和田政宗

LGBT法案、私が退席した理由|和田政宗

LGBTの方々への理解増進は重要であると考えている。そうした方々がいるということを社会全体が知り、共に生きていくことは重要なことだ。一方で、それを法律で定めるかについては、我が国においてこれまで極めて慎重であった――。


国民のこと、自民党のことを考え行動した

『LGBT理解増進法』が、6月16日の参院本会議で賛成多数で可決・成立した。私はこの採決において退席をした。その判断については、本会議終了後にメディアにも答え、報じられているところであるが、数多くの国民の声、自民党員の声、自民党支持者の声を受けとめた結果であり、国民のこと、そして自民党のことを考え行動したものである。

なお、この間、法案を通すよう党執行部からの指示があるなか、参議院自民党においては法案の内容が改善されるよう、会長、幹事長、国対委員長をはじめ最大限の力が尽くされたことについては申し述べておきたい。

今回の行動に至った理由として、法案については新たに述べるものは何もない。課題についてはこれまでに述べてきた通りである。新たに述べるとするなら、今回は皆様からの意見が過去の法案に例のないほど多く寄せられたということである。

電話やメール、FAXで日に何十件ものご意見をいただいた。普段は政策や法案についての意見は男性が多いのだが、今回は女性が多く、子育て中の方や若い方が多く含まれた。さらに、今回は特に自民党員や自民党支持者の方からの意見が多かった。

その意見の多くは、女性のスペースが守られるのかということと、学校における教育がどうなるのかという懸念であった。女性や女児が守られるのかという疑問については、子育て中の女性からの意見が特に多かった。

法案の修正において、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」と定められてはいるが、その運用に必要な指針の策定はこれからであり、国会審議を通しても疑問の声は収まらなかった。

(写真提供/時事)

G7において日本が突出することとなった

学校における教育への懸念の声も多く寄せられた。今回の法案では、学校において「児童等」に対し、性的指向及びジェンダーアイデンティティについて教育に努めることが定められている。すなわち、小学1年生から教えることも可能となっており、何歳から何を教えるのか、本当に小学生から教えるのかという疑問の声である。

なお、米国・フロリダ州においては、公立学校で性自認や性的指向などについて議論することを禁じる法律が昨年成立し、当初の対象年齢は小学3年生までであったが、今年になって高校生まで拡大された。そもそも学校教育で教えるのかが米国などで議論になっているなか、日本においてはその議論すら十分になされておらず、なぜいきなり法律に盛り込まれるのかとの指摘が数多く寄せられた。

私は、LGBTの方々への理解増進は重要であると考えている。そうした方々がいるということを社会全体が知り、共に生きていくことは重要なことだ。一方で、それを法律で定めるかについては、我が国においてこれまで極めて慎重であった。

それは、欧米各国と違い日本においては宗教上や法制度上、同性愛などは禁止されてこなかったし、戦国武将と小姓における男性間の関係など、むしろおおらかに許容する文化であったからである。

6月18日の読売新聞社説は、そうした点を踏まえ今回の法整備について疑問を呈した。『そもそも日本は最高法規で「法の下の平等」を定めている。LGBTに特化して差別禁止を定める理由は、見当たらない』。そして、『G7で、LGBTに特化した法律を持つ国はない。LGBT法は、国際社会でも極めて特異な立法といえる』と指摘した。

この点については私や同僚議員が党内で主張してきたが、受け入れられなかった。LGBTの方々に特化した法律はG7各国になく、個別法としての対応でなく既に存在する法律を改正し、LGBTを理由とする解雇等が起きないよう労働分野での平等原則を定めるほうが、G7の標準と合うのにだ。

LGBTの方々に特化した単独法の整備は、G7において日本が突出することとなった。

関連する投稿


「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

衆院選で与党が過半数を割り込んだことによって、常任委員長ポストは、衆院選前の「与党15、野党2」から「与党10、野党7」と大きく変化した――。このような厳しい状況のなか、自民党はいま何をすべきなのか。(写真提供/産経新聞社)


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

衆院選が終わった。自民党は過半数を割る大敗で191議席となった。公明党も24議席となり連立与党でも215議席、与党系無所属議員を加えても221議席で、過半数の233議席に12議席も及ばなかった――。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


最新の投稿


【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

突然、月8万円に……払いたくても払えない健康保険料の実態の一部を、ジャーナリスト・笹井恵里子さんの新著『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より、三回に分けて紹介。


【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

税金の滞納が続いた場合、役所が徴収のために財産を差し押さえる場合がある。だが近年、悪質な差し押さえ行為が相次いでいるという(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

いまもっぱら話題の「103万円、106万円、130万円の壁」とは何か。そしてそれは国民健康保険料にどう影響するのか(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心  キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心 キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!