まるで使い捨て、こらえ性のない小沢一郎
さて、記者会見で小沢氏のもう片方の隣に座ったのは、令和3年11月の代表選に立候補した小川淳也衆院議員だった。小川氏に中心的な役割を担ってもらおうという腹積もりなのだろう。
小沢氏は旧自由党代表だった平成31年4月、国民民主党と玉木雄一郎代表と交渉し、合併にこぎつけた。立民に移ってからは令和3年の立民代表選で小川氏ではなく、泉氏を支援し、その後、泉氏があまり言うことをきかなくなると、「生意気だ」(小沢氏周辺)として、はしごを外し小川氏に接近する。こらえ性のない小沢氏らしい行動パターンである。
ある立民議員は「玉木氏に近づき、その次は泉氏に近づき、最後は離れる。まるで使い捨てのようだ。小川氏もいつか捨てられるのではないか」と心配している。
果たして、泉氏は今回の動きをどう見ているのか。ツイッターにこんな投稿があった。
「維新、国民、共産、れいわ…。野党は幅広い。党内有志の仲間が昨日示した野党候補の一本化の構想。実際にどのように実現していこうとの構想であるか。数々の大勝負を経験してこられた大先輩の小沢一郎議員をお招きし、近日中にもお話を伺いたい」
記者会見では「言うはやすしだ」と述べており、維新の馬場伸幸代表が「立民を叩き潰す」と語っているなかで、どうせよというのか、という本音が透けて見える。
小沢氏は、候補者を一本化することで、与党を過半数割れに追い込み、電光石火のごとく野党で連立政権を樹立することを考えているのだろう。そのときの首相は、いまや上り調子の維新から出すというシナリオまで練っているのではないか。
細川政権をつくったときのやり方である。小沢氏は維新に対し「首相は維新からでいい」と伝え、ポストで誘いこむことで候補者の一本化を進めようとしている可能性がある。もっとも、勢いに乗る維新は、ポストをぶら下げて、ホイホイとついてくるような柔な政党ではなかろう。
小沢氏が言うように「候補の一本化が大事だと思っている人が大多数」というのなら、旧民主勢力がいまだに国民の信頼を得られずにいる原因を、立民は全く理解していないことになる。その姿は嘆かわしくもあり、実に哀れである。
著者略歴
1970年生まれ、兵庫県西宮市出身。成蹊大経済学部卒。94年、産経新聞社入社。甲府支局、多摩支局、整理部、社会部を経て政治部に配属。野党クラブキャップ、霞(外務省)クラブキャップ、平河(自民党)クラブキャップ、厚生労働省クラブキャップなどを経て現在、論説委員兼政治部編集委員。