米国では性自認を議論することを禁じる法律も
政府は、駐日米国大使としての発言なのかを公式に確認し、もしそうであるならば毅然とした態度をエマニュエル大使に取るべきであるし、私が危惧しているのは、もし来年の米国大統領選挙で民主党政権でなく、共和党政権になった時に日本がどう見られるのかという点である。
共和党では、LGBTの方々への理解増進のあり方については慎重な意見があり、共和党が知事を務めるフロリダ州では、公立学校で性自認や性的指向などについて議論することを禁じる法律が昨年成立し、当初の対象年齢は小学3年生までであったが、今年になって高校生まで拡大された。
さらに、その他の共和党が知事を務める州では、トランスジェンダーの若者への規制も強まっている。テネシー州では、今年3月、未成年が性別適合のための治療を受けることを禁止する法案が成立した。
すでに、サウスダコタ州やミシシッピ州でも同様の法律が成立しており、ミシシッピ州のリーブス知事は、法案に署名した理由について、「誤ったイデオロギーのもとで、子どもたちが(自認する性とは)異なる体を持ったと信じ込まされている」(3月4日 日経新聞)と語っている。
こうしたことから、米国が共和党政権になった時に、「日本はなぜ民主党のエマニュエル大使の圧力で行動したのか」と問われる可能性がある。だからこそ、我が国は我が国で、LGBTの方々への理解増進のあり方を考えるべきなのである。
これらについては、「G7前にLGBT理解法案を提出しなければ、G7で大変なことになる」との話が、実際はどうだったのかを見てみてもわかる。G7では、LGBTの方々に特化した議論ではなく、ジェンダー平等、女性の人権を守ることなどのあらゆる人権問題のなかでLGBTの方々についても議論が行われた。
「暴力」という表現が入っていることに驚いた
G7の首脳宣言にはこう記されている。
「ジェンダー平等及びあらゆる女性及び女児のエンパワーメントの実現は、強靭で公正かつ豊かな社会のための基本である。我々は、あらゆる多様性をもつ女性及び女児、そしてLGBTQIA+の人々の政治、経済、教育及びその他社会のあらゆる分野への完全かつ平等で意義ある参加を確保し、全ての政策分野に一貫してジェンダー平等を主流化させるため、社会のあらゆる層と共に協働していくことに努める」
「多様性、人権及び尊厳が尊重され、促進され、守られ、あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」
宣言文においては、女性や女児の権利が後退することに強い懸念が表明され、女性やLGBTQIA+の方々が経済などの分野で、平等な参加機会が確保されることに努めるとしている。これらは我が国でも当たり前のことであるが、私は宣言文で「暴力」という表現が入っていることに驚いた。
我が国においては、LGBTQIA+の方々への暴力などあってはならないと国民全体が認識しているし、もし暴力を受けることがあったら、みんなが止めるはずだ。LGBTQIA+の方々への「暴力」について言及されるような社会では我が国はないし、世界でそのようなことが起きているなら、それは各国が連帯し防ぐべきである。
こうしたことを見ても、LGBTの方々への理解増進のあり方は、各国の社会状況や文化、宗教的価値観でも違いがあり、我が国は我が国でしっかりと議論をしていくべきだ。決して法案ありきではない。議論継続を党内で強く主張した議員として、ブレずに行動していく。
同様の考えの議員も、その考えを貫こうとしている。我々は有権者から投票を受け活動をしている。私のもとに多く寄せられている、慎重意見、議論継続の意見をしっかり受け止めて行動したい。