「お笑い北朝鮮」視の弊害
昨年4月、金正恩が革ジャン(?)にサングラスのいで立ちでミサイル発射をアピールする映像が放送された。「まさかのハリウッド風」と笑われ、格好をつけてもあか抜けない、出来の悪いパロディ映像のような仕上がりには笑いを禁じ得なかったが、『金正恩の核兵器』を読んだ後では、これすらも「世界の目を油断させる計算ずくの罠なのでは」とさえ思えてしまう。
「閉ざされた世襲制の社会主義国家で、時代錯誤のマスゲームや自国礼賛のテレビ報道を続けている遅れた国」だと侮っていては、北朝鮮の能力を見誤ることになる。特にミサイル開発は、金正恩政権になってから、一段も二段もギアをあげてきたというほかない。
Jアラート嫌いではない側であっても、時に「金正恩選手、今期10号目」などとホームランになぞらえた揶揄を書き込んだり、思わず笑ってしまったりした経験のある人はいるだろう。筆者(梶原)も例外ではない。
だがこうした「ネタ化」も、ともすれば北朝鮮の核・ミサイルを軽視する風潮につながったかもしれないと反省している。
私たちが北朝鮮を笑っている間に、相手は核・ミサイルやサイバー能力を磨きながら、こちらを笑っていたに違いないのだ。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。