推薦書を再提出、韓国外務省は「遺憾」
日本政府は、世界文化遺産への登録を目指す新潟県の「佐渡島(さど)の金山」の推薦書をユネスコ(国連教育科学文化機関)に先週19日に再提出した。元々は今年の登録を目指しており、昨年2月に政府は推薦書を提出した。しかし、記述についての不備をユネスコから指摘され、再提出したものである。
推薦書はユネスコの事務局が確認した後、ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関であるイコモスによる現地調査や評価結果の勧告が行われ、来年夏頃に開かれる世界遺産委員会で登録の可否が審議される。
当初、今年の登録を目指していたのは、韓国が、今年改選される世界遺産委員会委員国への立候補を表明しており、委員国に選出されれば登録に反対することが想定されるからだ。世界遺産委員会での登録決定は全会一致が基本だが、反対国があれば多数決になる。
委員国は21であり、3分の2の賛成が必要である。今月9日には、岸田文雄総理がユネスコ事務局長と会談し、佐渡金山の世界遺産登録へ向けて説明を行った。
日本政府が佐渡金山の推薦書を再提出したことについて、韓国外務省は20日、「遺憾を表明する」と発表。韓国は、佐渡金山は「強制労働の被害現場」であると主張しており、この発表でも佐渡の鉱山で戦時中に朝鮮半島出身者が働いていたことを指摘した。
その上で、平成27(2015)年に世界文化遺産に登録された長崎県の端島(軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」について以下のように言及した。
「強制労働の歴史を説明する追加措置が忠実に履行されない中、日本政府が類似した背景の佐渡金山を世界遺産に登録しようとしている」
また、「戦時の強制労働の辛い歴史を含む全体の歴史が反映されるよう、ユネスコなど国際社会とともに努力を続けていく」と主張した。
韓国が主張する期間はそもそも含まれない
しかし、佐渡金山の世界遺産登録の対象期間は16世紀末~19世紀半ばであり、韓国が主張する期間はそもそも含まれない。永岡桂子文部科学大臣は20日の記者会見で、明治日本の産業革命遺産と佐渡金山とは「全く異なる文化遺産で、それぞれ個別に対応すべきものと考えている」と反論した。
佐渡金山の世界遺産登録に向けては、「江戸時代までの伝統的な手工業による生産技術と生産体制を示す遺構が文化的価値の対象で、文化遺産としての素晴らしい価値が評価されるように国際社会に対して丁寧な説明を行っていきたい」と述べた。
そして、韓国が、佐渡金山に絡めて述べている長崎の端島炭坑(軍艦島)を含む世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」であるが、昨年末に大きな動きがあった。これは、佐渡金山の世界遺産登録に向けても重要なことであると考える。
ユネスコは一昨年、「明治日本の産業革命遺産」における旧朝鮮半島出身労働者に関する説明の改善を求める決議を採択し、政府に報告書提出を求めていた。これに対し、政府はユネスコへ報告書を昨年11月末に提出した。
私は報告書がおかしな内容になってはいけないと考え、内閣官房に状況について随時問い合わせてきたが、内閣官房は事実に基づいた主張を行うと断固たる姿勢を示し、しっかりとした事実に基づく内容のものを提出してくれた。
『ユネスコ世界遺産センターへの保全状況報告書の提出について』(内閣官房)