「実績」は大半が「言うだけ」「検討するだけ」
年頭会見で岸田首相がこれまでの「政権の実績」として自賛したのは下記4つである。
・防衛力の抜本強化
・エネルギー政策の転換
・新興企業支援
・資産所得倍増にむけた施策
そして最後に言及したのが、新型コロナウイルス対応だ。
「いわゆる第8波を乗り越え、今年こそ平時の日本を取り戻してまいります」
第8波? 私が滞在しているアメリカでは、昨年7月15日をもって、新規感染者の発表すらやめた。
50州全てでマスクの着用義務が全廃され、地下鉄や航空機、商用施設、スポーツ観戦でも、マスクをしている人を探すほうが大変だ。
久しぶりにコロナの話がニュースになったのは中国での昨年来の感染爆発とそのための水際対策だったが、大した話題にはならなかった。要するに欧米先進国ではコロナは「終わった話」なのだ。
それに対して日本はどうだ? 岸田首相は昨年7月31日、新型コロナウイルスの感染症法上の分類を最高レベルに近い警戒体制である2類から5類に落とすことを「検討する」と記者会見で述べた。
それから半年が経とうとしているが、未だに新型コロナウイルスは2類のままだ。岸田首相はまだ検討しているというのか?
10月には「5類への引き下げは時期尚早」とトーンダウンし、今回の年頭会見では「検討」という言葉すら消えた。
岸田首相の「言うだけ」「検討するだけ」はコロナだけではない。8月24日に政府の基本的なエネルギー政策について「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」をぶち上げたが、目玉の一つとされた原発の再稼働や新規増設については、年頭会見では全く言及しなかった。
もし原発を温室効果ガスを発生しないクリーンなエネルギーと位置付けて岸田政権として全面的に推進していこうという「思い」を少しでも持っているなら、年頭会見で新規増設に全く触れないということは考えられない。
次世代型小型原子炉の新規増設など所詮あと20年はかかると言われている。どうせ自分の政権とは無関係の話だから、「言ってみただけ」「打ち出してみただけ」なのだろう。
安倍元首相暗殺以降支持率の底割れに苦しむ岸田首相としては、離れゆく保守層に縋りつくために口にした政策や方針だったが、どれもやり遂げる意志も策もない「言ってみただけ」だったことが、年頭会見で改めて明らかになった。