伊藤詩織氏の「いいね」訴訟はジャーナリズムの自殺行為だ|山口敬之【WEB連載第19回】

伊藤詩織氏の「いいね」訴訟はジャーナリズムの自殺行為だ|山口敬之【WEB連載第19回】

伊藤詩織氏は、ジャーナリストを自称している。ジャーナリストを標榜するのであれば、言論や表現の自由を出来るだけ制限しない社会を目指すのが当然だ。だが、伊藤氏が作り出そうとしているのは、「気軽にSNSボタンも押せない息苦しい社会」である――。


ジャーナリズムは言論と意思表示の自由に依拠

伊藤詩織氏は、ジャーナリストを自称している。

ジャーナリズムとは、そもそも憲法21条に明記された「言論の自由」があって初めて自由闊達に機能する職業だ。しかし「言論の自由」は大日本帝国憲法でも29条に明記されていた。

29条は「日本国民は、法律の範囲内において、言論、著作、印行、集会及び結社の自由を有する」とした。戦前は「法律の範囲において」という但し書きを逆手にとった言論弾圧が横行した。

現行憲法の21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」となっている。

ジャーナリズムとは、国民一人一人の意思表示の自由の上に成り立っている商売である。そしてその自由のレベルは、憲法と法律の解釈と運用によっていかようにも変更しうるものであることは、大日本帝国憲法下の日本を見れば明確である。

現行憲法下においても、裁判所の判決いかんで、言論の自由の範囲や程度は自在に変化する。

ジャーナリストを標榜するのであれば、言論や表現の自由を出来るだけ制限しない社会を目指すのが当然だ。

私はこれまで、伊藤詩織氏との訴訟に関連して数えきれない誹謗中傷を受けてきた。もちろん限度を超えた侮蔑については複数の訴訟を提起している。

しかし私を明らかに誹謗中傷するツイートやFacebook投稿に「いいね」を押した人に対して訴訟を起こそうなどとは考えたこともなかった。それは、ジャーナリズムという自身の職業の地盤を危うくする自殺行為だと感じていたからだ。

(写真撮影・編集部)

私への誹謗中傷ツイートへの「いいね」について

私は伊藤詩織氏との裁判を通じて、伊藤詩織氏の嘘や矛盾を証拠や証言を添えて数多く証明した。しかし裁判所は、「当時は混乱していた」などとして本質的な矛盾にも目を瞑り、伊藤詩織氏が創作した矛盾に満ちたストーリーを追認した。

人間が人間を裁く以上、裁判に完璧はない。声高に被害者であることを強調し、メディアや一定勢力に守られた人物の主張を根幹から否定するのは、裁判長にとっても容易なことではなかろう。

今回の高裁審理で伊藤詩織氏の被害者しぐさは、判決にどの位影響を与えたのだろうか。

これを確認する手がひとつある。私に対する過激で違法な名誉毀損ツイートに「いいね」を押した人物に対して、私が訴訟を起こしてみることである。

日本の裁判所が、先入観なく事実を見つめ、公平公正な判決を下すのであれば、私にも同じ判決が下るはずだ。私の周りには、「司法の健全性を確認するためにも、ぜひ同様の訴訟を起こして欲しい」と申し出る方もいる。

伊藤詩織氏のアクションと今回の石井浩裁判長の判決によって、日本はより息苦しい社会となってしまった。そのことに対する問題提起として自分で何をするべきか、皆さんのご意見を拝聴しながら、しばらく考えたいと思っている。

関連する投稿


虚しき岸田政権のコピペ外交|山口敬之【WEB連載第21回】

虚しき岸田政権のコピペ外交|山口敬之【WEB連載第21回】

11月13日、東アジアサミットで中国を名指しで批判した岸田首相。「岸田首相は覚醒した」「初めて毅然とした姿勢を示した」と評価する声も出たが、はたして本当にそうだろうか。岸田首相の発言を検証すると、バイデン大統領の発言と「ウリ二つ」であることがわかった――。(サムネイルは首相官邸HPより)


韓国のプロパガンダに使われたNHK「緑なき島」|和田政宗

韓国のプロパガンダに使われたNHK「緑なき島」|和田政宗

「軍艦島は地獄島だった」「強制連行されたうえ劣悪な環境で働かされ、多くの人が命を落とした」。このような韓国のプロパガンダは、NHKの短編ドキュメンタリー映画「緑なき島」から始まった。NHKの捏造疑惑について国会で何度も質問をしたが、NHKはいまだにはぐらかし続けている――。


ミサイル連発の北朝鮮 Jアラート精度向上と「反撃能力」保有を急げ!|和田政宗

ミサイル連発の北朝鮮 Jアラート精度向上と「反撃能力」保有を急げ!|和田政宗

10月に続いて2度目の「Jアラート」が発出されたが、「遅い!」「不正確!」などの批判が殺到している――。なかには「毎回Jアラート出して騒ぎすぎるべきなのか」という意見も。Jアラートの改善点と、北朝鮮にミサイルを撃たせないために必要な軍事力を和田政宗議員が緊急提言!


習近平が狙う「毛沢東越え」と国家による「臓器狩り」|和田政宗

習近平が狙う「毛沢東越え」と国家による「臓器狩り」|和田政宗

第20回中国共産党大会によって、習近平独裁は完全に確立された。国際社会は中国の横暴を阻止しなくてはならないが、まだあまり知られていない問題もある。それは、中国がウイグル人や政治犯とされる人たちから移植用の臓器を摘出する「臓器狩り」についてだ。


ウクライナは「ホロドモール」を忘れない!|小笠原理恵

ウクライナは「ホロドモール」を忘れない!|小笠原理恵

ある者は「政治的妥結!」と叫び、ある者は「プーチンが停戦だと呼び掛けたのだから乗るのが筋だ」と叫ぶ。ウクライナが妥協すれば、平和な社会が戻ってくると本気で思っているのだろうか。約束を守らないのがロシアであり、ロシアの残虐性をウクライナは誰よりも知っている――。


最新の投稿


なべやかん遺産|「価値のない物」

なべやかん遺産|「価値のない物」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「価値のない物」!


ロシアと北朝鮮の「悪の取引」|西岡力

ロシアと北朝鮮の「悪の取引」|西岡力

米韓軍事演習への対抗措置として、4日間で39発のミサイル乱射した北朝鮮。その常軌を逸した行動の裏には、ロシアの影が――。


【独占スクープ!】統一教会問題の「黒幕」|福田ますみ

【独占スクープ!】統一教会問題の「黒幕」|福田ますみ

新潮ドキュメント賞を受賞したノンフィクション作家の福田ますみ氏が、「報じられない旧統一教会問題」を徹底取材。第2回目は「統一教会問題の『黒幕』」。自らの正体と真の狙いを35年間ひた隠しにしてきた巨悪の実態。


虚しき岸田政権のコピペ外交|山口敬之【WEB連載第21回】

虚しき岸田政権のコピペ外交|山口敬之【WEB連載第21回】

11月13日、東アジアサミットで中国を名指しで批判した岸田首相。「岸田首相は覚醒した」「初めて毅然とした姿勢を示した」と評価する声も出たが、はたして本当にそうだろうか。岸田首相の発言を検証すると、バイデン大統領の発言と「ウリ二つ」であることがわかった――。(サムネイルは首相官邸HPより)


【読書亡羊】中台統一に「タピオカ屋」まで使う習近平 川島真、小嶋華津子編『UP Plus 習近平の中国』(東京大学出版会)

【読書亡羊】中台統一に「タピオカ屋」まで使う習近平 川島真、小嶋華津子編『UP Plus 習近平の中国』(東京大学出版会)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!