業務の透明性を求められる自衛隊
自衛隊も創設直後は帝国軍の伝統を残し、基地周辺や重要な軍事関係施設の写真撮影を阻止しようと頑張っていた。前回のレポートを振り返るが、1985年第102国会で当時の内閣総理大臣中曽根康弘氏が「防衛庁としては、各部隊等に対して写真撮影を行わないよう強制することはできない旨適宜指導している」と回答した。
この時から37年間にわたり、自衛隊は基地や駐屯地内の写真撮影禁止を強要できない。国会の指針を遵守するしかない立場だからだ。
自衛隊は国防という重要な役割を担う「軍隊」であるにもかかわらず、行政組織としてその業務の透明性を求められるという、相反する立場にある。軍事組織は外国の軍事侵攻にたいして、こちらの能力や戦略を察知されないように秘密を保持し、敵の能力を諜報によって秘密裡に奪う力を求められる。
しかし、自衛隊は行政組織であるがゆえにその業務を国民の前に開示し、法を順守し、その活動を報告する義務をもつ。諸外国の軍事組織はどんな小さなリスクも排除するために撮影禁止が基本だが、自衛隊はそれすら強制できない以上、「外部から撮影されてしまうものは仕方ない」と自衛隊が認識するのは当然だ。
どんな小さなリスクも排除する諸外国の秘密保全体制と、見られてしまったら仕方ないと次々とあきらめていく日本ではスタート地点から違う。
情報は玉石混交だ。外観や設備、装備品ばかりに注目している人も多いが、問題はそこではない。このレポートで様々な例を挙げていくが規制できないものが多い。(一部は違法性を疑えるものもあるが……)。
動画を放置する政府の「罪」
さて、今回は潜水艦だ。「空母改修工事」が全世界公開されているのだから、潜水艦が無事なはずがない。日本では特定秘密情報保護法で指定されているものだけは間違いなく軍事機密扱いだが、それ以外の機密を漏らしても問題視されない緩い体制だ。
一度公開された動画や画像は消せない。台湾有事は目の前だ。そんな時に自衛隊基地の撮影でどんな情報が洩れているか。もう黙ってはいられない。問題を認識する愛国者が増え、国にこの問題を指摘していかなければ、さらに傷口は広がる。これを放置している政府の許しがたい「罪」を糾弾する人が増えてくれればと願う。
広島県警によると、海上自衛隊の呉市でのドローン禁止地域は海上自衛隊呉地方総監部周辺地域 と呉第六突堤周辺地域になる。空母化工事中のジャパンマリンユナイテッド(JMU)ドックはこのドローン飛行禁止区域の間の空白地帯だ。そのため、前回のレポートした「空母改修工事」動画は同法違反ではない。
だが、今回の潜水艦バース(第六突堤)はドローン撮影禁止区域内だ。紹介する動画がそれにあたるかどうかは警察の判断によるのでわからない。